四つの署名 The Sign of the Four
『四つの署名』出版までの経緯
『四つの署名』 (The Sign of the Four)は、アーサー・コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズ第2作です。ドイルが生涯に書いた「ホームズ」シリーズの長編4作のうちの1作でもあります。出版年は、1890年。アメリカの月刊誌 Lippincott's Monthly Magazineの編集者 M. Stoddart氏の依頼を受けて執筆し、同誌の1890年2月号に掲載されました。ストーリーのスケールの大きさは、『緋色の研究』(A Study in Scarlet)に匹敵するものです。
この小説の執筆の経緯は、ドイルの自伝『わが思い出と冒険』("Memories and Adventures")に詳しく記されています。ただし、この本の邦訳には、うっかりミスなのか、肝心の部分に誤訳が含まれていますので、ここで該当箇所の原文と邦訳、そして修正した拙訳を併記しておきたいと思います。
Now for the second time I was in London on literary business. Stoddart, the American, proved to be an excellent fellow, and had two others to dinner. They were Gill, a very entertaining Irish M.P., and Oscar Wilde, who was already famous as the champion of aestheticism. It was indeed a golden evening for me. Wilde to my surprise had read “Micah Clarke “and was enthusiastic about it, so that I did not feel a complete outsider. His conversation left an indelible impression upon my mind. He towered above us all, and yet had the art of seeming to be interested in all that we could say. He had delicacy of feeling and tact, for the monologue man, however, clever, can never be a gentleman at heart. He took as well as gave, but what he gave was unique. He had a curious precision of statement, a delicate flavour of humour, and a trick of small gestures to illustrate his meaning, which were peculiar to himself. The effect cannot be reproduced, but I remember how in discussing the wars of the future he said: “A chemist on each side will approach the frontier with a bottle “ — his upraised hand and precise face conjuring up a vivid and grotesque picture. His anecdotes, too, were happy and curious. We were discussing the cynical maxim that the good fortune of our friends made us discontented. “The devil,” said Wilde, “was once crossing the Libyan Desert, and he came upon a spot where a number of small fiends were tormenting a holy hermit. The sainted man easily shook off their evil suggestions. The devil watched their failure and then he stepped forward to give them a lesson. What you do is too crude,’ said he. ‘Permit me for one moment.’ With that he whispered to the holy man, ‘Your brother has just been made Bishop of Alexandria.’ A scowl of malignant jealousy at once clouded the serene face of the hermit. ‘That,’ said the devil to his imps, ‘is the sort of thing which I should recommend ‘.”
The result of the evening was that both Wilde and I promised to write books for “Lippincott’s Magazine “ — Wilde’s contribution was “The Picture of Dorian Grey,” a book which is surely upon a high moral plane, while I wrote “The Sign of Four,” in which Holmes made his second appearance.
(from Sir Arthur Conan Doyle, "Memories and Adventures", 1924 )
出典:AMAZON Kindle Edition. published by Delphi Classics, 2017
https://www.amazon.co.jp/Memories-Adventures-Arthur-Illustrated-Delphi-ebook/dp/B074KLLCHS/ref=sr_1_5?s=english-books&ie=UTF8&qid=1515677616&sr=1-5&keywords=conan+doyle+memories+and+adventures
邦訳の該当箇所(ママ):
さてつぎは文学の用事で二度目にロンドンへ出たときの話だ。アメリカ人ストッダートはりっぱな男だったが、ほかに二人が同席した。一人はギルという愉快な代議士で、あとはオスカー・ワイルド(世紀末を代表する小説家、サロメの作あり、一八五六―一九〇〇――訳者)で、これは唯美主義者のチャンピオンとしてすでに名をなしていた。私にとっては金色の夜であった。驚いたことにワイルドは「マイカ・クラーク」を読んでいて、ひどく熱をあげていたから、私は知らぬ人の前へ出たような気はしなかった。彼は私たちよりも群をぬいているだけだが、それでもこっちのいうことには面白がってみせる術を心得ていた。感じかたや如才なさにこまやかさがあったが、一人芝居の男は心から紳士ではあり得ない。彼は与えもした代りに、与えるものは独特であった。話しかたには妙に正確さがあり、こまやかなユーモアをもち、話を分からさせるために独特の小さな身振りを加えた。あれを再現するのは不可能だが、将来の戦争がどうなるかを論じあったときのことを 覚えている、「両方から化学者がびんを持って接近してゆく。」―― ここで片手をあげて、まじめくさった顔に気味のわるい色を浮かべてみせた。
その晩の結果はワイルドも私も「リピンコット」誌に小説を書く約束のできたことだった。それで書いたのがワイルドの「ドリアン・グレーの肖像」で、これは高い倫理的水準にあるものだった。私の書いたのはホームズの第二作「緋色の研究」だった。
(延原謙訳『わが思い出と冒険』より)
出典: AMAZON Kindle Edition. published by 新潮社, 2016
修正した拙訳:
さて、文学の用件で二度目にロンドンにいたときのこと。アメリカ人のストッダートは、優秀な仲間だと後で分かったのだが、ディナーに他の2人を連れてきた。一人はアイルランド出身の愉快な国会議員のギル、もう一人は耽美主義の旗手として既に有名だったオスカー・ワイルドだった。それは私にとってまさに黄金の一夜だった。ワイルドは、驚いたことに「マイカ・クラーク」(訳注:コナン・ドイルが1889年に刊行した歴史小説)を読んでおり、それに夢中になっていたので、私は自分が完全な部外者だという気はしなかった。彼の会話は私の心に忘れられない印象を残した。彼はわれわれのうち誰よりも抜きん出ていたが、それでもわれわれの言うことに関心をもっているように見せかける術を心得ていた。彼は感情の細やかさと如才なさを備えていた。けれども、この長談義する男にとっては、賢いということは心からの紳士とは決していえなかった。彼は相手に与えると同時に自分も得たが、彼が与えたものはユニークなものだった。彼の述べることには妙な正確さがあり、繊細なユーモアのセンスがあり、伝えたい意味を示すための小さな仕草のトリックがあったが、それらは彼一流のものだった。その効果を再現することは不可能だが、私たちが将来の戦争について議論していたときに彼がこう言ったのを覚えている。「両陣営の化学者がビンを持って戦線に近づいていくだろう」。そのとき彼が持ち上げた手と正確な顔つきは鮮烈でグロテスクな映像を浮き立たせてみせたのである。彼の語る逸話も楽しくて独特のものだった。われわれは「友人の幸運は私たちを不満にさせる」という皮肉な格言について話し合っていた。ワイルドは言った。「悪魔がかつてリビア砂漠を横断していた。そして彼はたくさんの小悪魔たちが聖なる隠遁者を苦しめている場所まで来た。聖者は悪魔のささやきを簡単に振り払った。悪魔は彼らの失敗を見て、次のような教訓を与えた「おまえ達のやっていることは粗雑すぎる。俺にちょっとの間やらせてみろ」。そして、悪魔は聖者にささやいた。「あなたの兄弟は、いましがたアレクサンドリアの司祭に任命されたぞ」。すると、たちまち隠遁者は嫉妬心で顔を曇らせた。」悪魔は、小悪魔たちに言った。「これこそ、俺が薦めるものだ」。
その夜の成果は、ワイルドも私も「リピンコット」誌に本を書くことを約束したということだった。ワイルドのなした貢献は、間違いなく高い道徳レベルにある「ドリアン・グレイの肖像」を書いたことだった。そして、私はといえば、ホームズが二番目に登場する「四つの署名」を書いたのである。
ランガム・ホテルでの会食が行われたのは、1889年8月30日でした。当時、アメリカではイギリス文学が流行しており、「リピンコット」誌の編集者は、コナン・ドイルの『緋色の研究』を読み、ドイルにぜひ同誌のために小説を書いてもらいたいと思ったのです。たまたま、この会食には高名なオスカー・ワイルド氏も出席しており、雑誌寄稿の約束も取り付けたこともあり、ドイルにとっては忘れられない「黄金の一夜」になったというわけです。
なお、ランガム・ホテル(地図の1)は、『四つの署名』の中で、ホームズの依頼人ミス・モースタンの父親が投宿し、その後行方不明になったとされるホテルです(その後、死亡が判明)。ランガム・ホテルは1865年に建てられ、当時もっとも近代的な豪華ホテルでした。ダイアナ妃やチャーチル首相が泊まるなど、華やかな歴史に彩られています。第二次世界大戦で爆撃によって被害を受け、閉鎖を余儀なくされます。戦後、BBCがこのホテルを買収しましたが、その後ヒルトン・ホテルが買収し、1991年にLangham Hiltonとして再オープンします。さらに、1995年には、香港を拠点とするGreat Eagle Holgingsが買収し、大がかりな修繕を施して、かつての豪華ホテルの姿をよみがえらせました。現在では、ロンドン屈指の五つ星ホテルとして君臨しています。
事件の発端
シャーロック・ホームズがベイカー街221Bのオフィスで暇を持て余していたとき、メアリ・モースタンと名乗る品の良い女性がホームズを訪ねてきました。赴任先のインドから帰国してランガム・ホテルに泊まっているはずの父親(モーンスタン大尉)が行方不明だというのです。父の友人で、一足先にインドから帰国したショルトー大佐にも連絡したが、父の帰国さえ知らなかったということでした。
そして、けさこんな手紙が届いたというのです。ホームズはそれを受け取って読んでみました。
"Thank you," said Holmes. "The envelope too, please. Postmark, London, S.W. Date, July 7. Hum! Man's thumb-mark on corner,—probably postman. Best quality paper. Envelopes at sixpence a packet. Particular man in his stationery. No address.
'Be at the third pillar from the left outside the Lyceum Theatre tonight at seven o'clock. If you are distrustful, bring two friends. You are a wronged woman, and shall have justice. Do not bring police. If you do, all will be in vain.—Your unknown friend.'
"Well, really, this is a very pretty little mystery. What do you intend to do, Miss Morstan?"
"That is exactly what I want to ask you."
"Then we shall most certainly go. You and I and—yes, why, Dr. Watson is the very man. Your correspondent says two friends. He and I have worked together before."
(from "The Sign of the Four")
単語と意味:
日本語訳:
「ありがとうございます。」とホームズは言った。「封筒も見せて下さい。消印はロンドンS.W.で日付は7月7日か。ふむ!角に男の親指の指紋があるが、たぶん郵便配達員のだろう。最上質の紙が使われている。封筒は1箱6ペンスのものだ。文房具に凝っている男だな。差出人住所なし。本文の内容は次の通り。
「今夜7時に、ライシアム劇場の外にある左から3番目の柱においでください。ご心配なようでしたら、お友達を二人お連れ下さい。あなたは不当な扱いを受けていらっしゃるご婦人ですので、埋め合わせをさせていただきます。ただし、警察官を連れてこないで下さい。もし連れてきた場合、すべてが無駄に終わるでしょう。
あなたの未知の友より。」
「さて、これは本当に小さな謎ですな。ミス・モースタン、どうなさるおつもりですか?」
「それをちょうどおたずねしたいと思っておりましたの。」
「それではわれわれはもちろんご一緒しますよ。あなたと私と、そうだ、ワトソン博士がまさに適任だ。あなた宛ての手紙の主は、二人の友人と言っている。ワトソン君と私は以前にも一緒に仕事をしたことがあるんですよ。」
ミス・モーストンは、父の机の中から見つけたものだといって、一枚の紙をホームズに見せました。
Holmes unfolded the paper carefully and smoothed it out upon his knee. He then very methodically examined it all over with his double lens. "It is paper of native Indian manufacture," he remarked. "It has at some time been pinned to a board. The diagram upon it appears to be a plan of part of a large building with numerous halls, corridors, and passages. At one point is a small cross done in red ink, and above it is '3.37 from left,' in faded pencil-writing. In the left-hand corner is a curious hieroglyphic like four crosses in a line with their arms touching. Beside it is written, in very rough and coarse characters, 'The sign of the four,—Jonathan Small, Mahomet Singh, Abdullah Khan, Dost Akbar.' No, I confess that I do not see how this bears upon the matter. Yet it is evidently a document of importance. It has been kept carefully in a pocket-book; for the one side is as clean as the other."
単語と意味:
ホームズは注意深くその紙を広げて、膝の上でしわを伸ばした。それから、二倍の拡大鏡を使って隅々まで調べた。「これはインドの地元の工場で作られた紙だ」とホームズは説明した。「これはしばらくの間、ボードにピンで留められていたな。紙に書かれた図面は大きな建物の見取り図で、無数のホールや廊下や通路が描かれている。その一箇所に赤いインクで小さな十字がしるされている。その上には『左から3.37』と薄い鉛筆で書いてある。左端には、奇妙な象形文字風の4つの十字が横一線に並んでいる。その脇に、非常に荒っぽくて粗雑な文字で、「四つの署名--ジョナサン・スモール、マホメット・シング、アブドゥラ・カーン、ドスト・アクバル」と書かれている。いやどうも、僕にはこれが事件とどう関係しているのか分からないな。しかし、これは明らかに重要な書類だ。表も裏もきれいであるところをみると、大切に財布に保管してあったのだろう。」
ポンディシェリ荘の惨劇
3人がライシアム劇場 (Lyceum Theatre)に着き、3番目の待ち合わせ場所に着くか着かないかのうちに、小柄な浅黒い顔の男が話しかけてきました。ホームズとワトソンが警察の者ではないことを確かめると、男は3人を四輪馬車に乗せて、霧のロンドンの街をフルスピードで走って行きました。着いた先は、テムズ川を渡った南ロンドン地区で、二階建ての住宅でした。ショルトー少佐の次男、サディアス・ショルトーが一行を出迎えました。ホームズの説明を手がかりに、ライシアム劇場からショルトー宅までの走行ルートを地図にプロットしてみました。だいたい、次の通りだったと推定されます。
Link: MAP TO THADDEUS SHOLTO'S HOUSE
サディアス・ショルターは、南ロンドンの自宅(地図の3)を出て、父の財宝が隠されているアッパー・ノーウッドの「ポンディシェリ荘」(地図の4)まで3人を案内しました。しかし、ポンディシェリ荘で彼らが発見したのは、無残に殺害されたバーソロミューの死体でした。死体には毒矢がささっていました。そして、財宝を入れた箱は消えていました。ホームズは、現場を検証した結果、犯人は義足の男であることを突き止めます。また、犯人が屋根裏部屋でクレオソート液に足を突っ込んだことを知り、猟犬を使って犯人を追うことにしました。
この間、ワトソン博士はミス・モースタンの魅力に強く惹かれ、彼女に対する恋愛感情が募っていくのでした。
犯人の追跡
翌日、ホームズは嗅覚の鋭いトービーという犬に、現場に残されたクレオソートを嗅がせて、逃亡犯人を追いました。トービーは郊外の住宅街を抜けて、ロンドンの都心部へと向かいます。われわれも、トービーの後を追って、このスリリングな追跡劇をWP Google Maps上で再現してみることにしたいと思います。トービーの追跡ルートについては、Thomas B.Wheeler氏が詳細なGoogle Mapを作成していますので、とりあえずこの地図と本文の地名を頼りに追跡ルートをたどってみましょう。
We had traversed Streatham, Brixton, Camberwell, and now found ourselves in Kennington Lane, having borne away through the side-streets to the east of the Oval. The men whom we pursued seemed to have taken a curiously zigzag road, with the idea probably of escaping observation. They had never kept to the main road if a parallel side-street would serve their turn. At the foot of Kennington Lane they had edged away to the left through Bond Street and Miles Street. Where the latter street turns into Knight's Place, Toby ceased to advance, but began to run backwards and forwards with one ear cocked and the other drooping, the very picture of canine indecision. Then he waddled round in circles, looking up to us from time to time, as if to ask for sympathy in his embarrassment.
単語と意味:
そのあと、トビーは再び元気よく尾行を開始したものの、行き着いた先は、材木置き場にあるクレオソートトのへばりついた樽でした。そこで、ホームズらは、迷ったもとの場所に引き返し、別の方向への追跡を再開しました。そして、最終地のテムズ川のほとりに着きました。
It tended down towards the river-side, running through Belmont Place and Prince's Street. At the end of Broad Street it ran right down to the water's edge, where there was a small wooden wharf. Toby led us to the very edge of this, and there stood whining, looking out on the dark current beyond. "We are out of luck," said Holmes. "They have taken to a boat here."
日本語訳:
道はベルモント・プレイスとプリンス街を抜けて、川岸の方へ下っていた。ブロード街の端で、道はまっすぐ水際まで下がっていた。そこには小さな船着き場があった。トビーは私たちを船着き場の先端まで導いて行き、そこに立ってくんくん嗅ぎながら、前方の暗いテームズ川の流れを見つめた。「われわれは運から見放されたな」とホームズは行った。「奴らはここからボートに乗ったんだ」
息詰まるテームズ川の追跡劇
ホームズは、追跡している義足の男が「オーロラ号」という船を借りたことを突き止め、街の子供達を使って、オーロラ号の居場所を探させた。一方、自ら年老いた船員に変装して捜索した結果、オーロラ号がジェイコブソン造船所付近から午後8時に出港するという情報を得ました。
ホームズはスコットランド・ヤードのアセルニー・ジョーンズ警部に頼んで、警察の高速蒸気艇を桟橋にまわすよう手配し、それまでの間、ベイカー街の自宅でにぎやかな夕食の宴を開いたのでした。
午後7時、ホームズと警察官は、ウェストミンスター桟橋(地図の6)で高速の蒸気艇に乗り組み、ジェイコブソン造船所の対岸にあるロンドン塔付近(地図の7)で待機しました。やがて、ホームズの手配した見張り役の上げる白いハンカチが見え、オーロラ号が姿をあらわしました。ここから、いよいよ最後のスリリングな追跡劇が始まります。
"Yes, it is your boy," I cried. "I can see him plainly." "And there is the Aurora," exclaimed Holmes, "and going like the devil! Full speed ahead, engineer. Make after that launch with the yellow light. By heaven, I shall never forgive myself if she proves to have the heels of us!" She had slipped unseen through the yard-entrance and passed behind two or three small craft, so that she had fairly got her speed up before we saw her. Now she was flying down the stream, near in to the shore, going at a tremendous rate. Jones looked gravely at her and shook his head. "She is very fast," he said. "I doubt if we shall catch her." "We must catch her!" cried Holmes, between his teeth. "Heap it on, stokers! Make her do all she can! If we burn the boat we must have them!"
単語と意味:
最初は高速のオーロラ号に引き離されかかったこともあったが、グリニッジ付近に来た時、警察の艇はオーロラ号に250ヤードにまで迫った。
At Greenwich we were about three hundred paces behind them. At Blackwall we could not have been more than two hundred and fifty. I have coursed many creatures in many countries during my chequered career, but never did sport give me such a wild thrill as this mad, flying man-hunt down the Thames. Steadily we drew in upon them, yard by yard. In the silence of the night we could hear the panting and clanking of their machinery. The man in the stern still crouched upon the deck, and his arms were moving as though he were busy, while every now and then he would look up and measure with a glance the distance which still separated us. Nearer we came and nearer.
単語と意味:
船が一挺身以内にまで迫ったとき、小男が短い筒を取り出して口にくわえました。毒矢だった。それを見てホームズらはいっせいに拳銃を発射し、間一髪で小男を倒しました。男は川に落ちました。そのとき、義足の男が舵を引き、オーロラ号は浅瀬の沼地に乗り上げて止まりました。男は船から飛び降りましたが、沼にはまってしまい、ホームズらが縄で引っ張って捕らえました。こうして、テームズ川の追跡劇は幕を閉じたのでした。
(『四つの署名』おわり)