読書

シェイクスピアの翻訳読み比べ

The Globe Theatre. photo by Matthew Kirkland from Flickr: CC



久しぶりに読むシェイクスピア作品集

7月末から8月中旬にかけて、ロンドンに2週間あまり滞在することになっている。とくに仕事らしい仕事もないので、博物館や美術館に行ったり、シャーロック・ホームズゆかりの「聖地」巡りなどをしたいと思っている。夜はミュージカルやオペラなどを鑑賞したい。そのついでに、せっかくなので本場のグローブ劇場でシェイクスピアの劇を鑑賞しようかと思っている。

シェイクスピアの戯曲は、学生時代から何度となく読んではいるのだが、昔のことゆえ、あらかた忘れてしまった。この機会に原書と翻訳を時間の許す限り多く読んでおきたいと思う。最近では、読みやすい新訳が次々と出版されているようで喜ばしい限りだ。特に評判がいいのは、松岡和子訳(ちくま文庫)と河合祥一郎訳(角川文庫)のようだ。

この2つの訳は、福田恆存、小田島雄志訳など、かつて評判が高く、私自身も親しんだことのある旧訳と比べて、原文にどのように近づき、かつ読みやすくなっているのだろうか? 本ブログのテーマにもふさわしい問題なので、Kindleで入手可能な6種類の翻訳および原書を入手して、主な作品について比較分析を試みたいと思う。

比較対象として選んだのは、過去50年間に出版された次の6冊である(『ハムレット』の場合)。

訳者出版社初版刊行年
福田恆存訳新潮文庫1967年
小田島雄志訳白水uブックス1983年
松岡和子訳筑摩Books1996年
野島秀勝訳岩波文庫2002年
河合祥一郎訳角川文庫2003年
安西徹雄訳光文社古典新訳文庫2010年

400年以上前の劇作家なのに、ここ50年の間だけでも6冊もの翻訳が出ているのは凄いと思う。

しかし、翻訳本を読んだだけでは、シェイクスピアを十分に楽しむことはできない。また、原書テキストのもつ独特の韻律を楽しむこともできない。本当の楽しみ方は、原書なり翻訳のテキストを用いた舞台を見ることだろう。

最近の舞台は、松岡訳か河合訳を台本として使っているようだ。その舞台をできれば見に行きたいものだ。私にとっては、8月にロンドンのグローブ劇場で原テキストを用いた「ハムレット」を見ることが予定されているので、そこでの舞台を最大限に楽しめるような、事前の準備をしておきたいと思っている。

YouTubeのaudiobookで楽しむシェイクスピアの「ハムレット」

そこで、いろいろとリサーチしたあげく、YouTubeにアップされている、シェイクスピア作品のaudiobookを聴きながら、翻訳を読み比べるのがいちばんいいという結論に達した。例えば、私が観る予定の「ハムレット」については、次のようなYouTubeのaudiobook(パブリックドメイン)のサイトがある。


これを流しながら、6種類の翻訳を一つ一つ読み進めていくのだ。そうすれば、オリジナルテキストの文章、韻律にもっともふさわしい翻訳を見つけることができるのではないだろうか?

ただし、このaudiobookのナレーターはクセが強く、かなり抵抗を感じる。そこで、他にいいaudiobookはないかと探した結果、次のaudiobookのほうが、発音も自然で聞き取りやすく、日本人向きであることがわかった。act1からact5に分かれており、次に示すのはact1である。

これからロンドンに行くまでの3ヶ月間、YouTubeのaudiobookと翻訳本を同時並行的に読み比べながら、シェイクスピアの主要作品を再読破したいと思う。

YouTubeで楽しむ、もう一つの「ロミオとジュリエット」

「ロミオとジュリエット」は、シェイクスピア作品の中では、もっとも人気がある。それだけに、YouTubeでも、さまざまなaudiobookが提供されている。とくに気に入ったのは、次のサイトだ。actごと、さらにsceneごとに、audioとtextがシンクロして表示されるのだ。これなら、原文テキストを手にしていなくても、画面と音声でオリジナルのRomeo & Julietを英語で楽しむことができる。

比較の結果は?

以上の方法で、原書のaudiobookを聴きながら、6つの翻訳テクストを読み比べてみた。その結果、「ハムレット」に関する限り、原書の内容と韻律をもっとも正確かつ自然な形で伝えていたのは、河合祥一郎訳だった。他の戯曲についても、主として河合訳を参照しながら、原書のテクストとaudiobookを読み進めて行きたいと思う。

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