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哲学堂公園と円了の道を歩く

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散歩の記録

日時:2023年12月20日(水)
天候:晴れ
行程:
8:30 家を出る
8:50 渋谷
9:10 高田馬場
9:20 新井薬師
9:30 哲学館公園
10:15 公園を出る
10:30 中野駅
11:00 新宿Caffice着

距離:2.16km
歩数:3382steps
カロリー:131kcal
平均速度:2.3km/h

ウォーキングマップ

フォトアルバム

スタート地点:西武新宿線・新井薬師駅

寒さがやや緩んだ師走の午前中、西武新宿線に乗って、新井薬師前駅を降り、中野哲学堂公園に向かいました。この公園は、1919年(大正8年)に井上円了が建立したもので、円了の没後、遺言に従って東京都に寄贈され、その後中野区に移管されて今日に至っています。元々は、円了の創設した哲学館(現・東洋大学)の移転先として購入した土地でしたが、哲学館事件などのために円了が哲学館大学を引退したために移転中止となり、引退後の円了の活動拠点として哲学堂が建設されることになったという経緯があります。

筆者は、東洋大学の教員を35年勤めたのですが、その間、この公園を訪れる機会がありませんでした。今回、東京散歩マップ制作の一環として、ようやくゆっくりと訪れる機会が得られました。事前に円了関係の書籍を読むなどの勉強をしておいたおかげで、公園内の記念物をじっくりと鑑賞することができました。写真と共に、円了の哲学の世界に触れたいと思います。

中野哲学堂公園の入口

新井薬師前駅から北に伸びる通りを歩いていくと、約10分ほどで、妙正寺川に着きます。橋を渡ると、左側に哲学堂公園の入口があります。ここから入って川沿いに歩いて行きました。まもなく右側に菖蒲池がありますが、その先から、道の左右に様々な石碑と説明板が置かれています。「哲学堂庭内七十七場」と言われる石柱群です。これは、円了が1915年に出版した「哲学堂ひとり案内」で紹介したもので、一つ一つの石柱に「概念橋」とか「唯心庭」「唯物園」など哲学に関連した名前をつけ、広大な庭内を一周する間に、哲学の世界をいわば周遊できるように工夫したものと考えられます。

哲学堂公園の地図

概念橋

概念橋

最初に見つけた石柱は、「概念橋」でした。説明文を見ると、「理性(島)に達する道程には概念(橋)が存するとしてこの名をつけた」とあります。一応渡ってみましたが、理性に到達したかどうか確認できませんでした。

唯心庭

次にお目にかかった石柱は、「唯心庭」でした。これは唯物園に対置される場所だそうです。デカルト以来、唯心論は不人気でしたが、ライプニッツが再認識を促し、近年ではスピリチュアリズムやAIの進歩で再び脚光を浴びようとしています。果たして「心」や「魂」は独自に存在するものなのか、不滅のものなのか、その謎は永遠に解かれることはないでしょう。それは「信じるか」「信じないか」の形而上学的な世界だからです。

唯物園

四聖堂

しばらく歩いたところで、右手の石段を登ってみたところ、四聖堂の建物裏に出ました。正面に回り込むと、「四聖堂」の大きな石柱と、円了像の石碑がありました。「四聖」というのは、円了が東京大学の研究生だった1885年10月27日、円了は哲学科の学生などを集めて「哲学祭」を行いました。このとき、古今東西の聖賢のうちから四聖として釈迦・孔子・ソクラテス・カントの四人を選び、聖人として祀ることにしたのです。円了が最も尊敬する哲学者はヘーゲルだったそうですが、なぜか四聖には入れていません。また、現在「四聖」(しせい)といえば、 釈迦・キリスト・孔子・ソクラテスの4人を指すのが普通ですが、円了はキリストも入れていません。円了はキリスト教が嫌いだったようです。円了には、それなりの選定基準があったようですが、誰にでも納得のいく選定基準だったかどうかは疑問です。

むしろ、私たちとしては、円了やその他の人々の選ぶ「四聖」にはとらわれず、自分自身の信念や好みに従って、自分だけの「四聖」を自由に選べばいいのではないかという気がします。私自身についていえば、東洋からは孔子最澄、西洋からはライプニッツキリストの4人を聖人として選びたいと思います。

六賢台

同じ広場の一方の端にある赤い壁のおしゃれは塔は、東洋における6人の賢人を祀る「六賢台」です。

宇宙館

説明書きによると、「宇宙館は哲学上の講話や講習会を開催するための講義室」だそうです。つまり、ここで円了は一般人を対象に哲学や妖怪学を講じたんですね。

哲理門(妖怪門)

最後に訪ねたのは、ある意味で一番有名なスポット、俗に「妖怪門」と言われる門です。よく見ると、門の向こうには、四聖堂の建物が見えていますね。門にはいろんな文字の板がかかっています。上部の左右には、左側に「幽霊」、右側に「天狗」の文字が見えます。格子の中を覗いてみると・・・ありました!左側には女の幽霊が、右側には男の天狗がこちらを睨んでいます。怖い!

 

 

円了は、生涯を妖怪の科学的研究に捧げましたが、妖怪という迷信を退治して、この門を通り抜けることによって初めて、哲学の真理に到達できることを示そうとしたのでしょうか?

哲学の庭

これで、円了の残した哲学堂公園の史跡巡りは終わりましたが、最後に思いがけない記念物に巡り合うことができました。それは、妙正寺川の反対側にある「哲学の庭」という小さな公園です。円了とのゆかりはないらしいのですが、説明書きを見ると、日本に帰化したハンガリー出身の彫刻家が残した「哲学の庭」という群像彫刻を中野区が2009年からここに展示しているのだそうです。円了の「四聖」とは違って、古今東西の哲学者たちを独自に選んで、彫像にしたもので、円了の嫌いなキリスト者(聖フランシス)も入っています。円了の「四聖」に入っているのは釈迦だけでした。ただし、どれも素晴らしい群像作品だと思いました。哲学堂公園と合わせて、一見の価値があります。

 

 

Caffice再び

哲学堂公園巡りが予定より早く1時間で終わってしまったので、忘れないうちに今回のウォーキングの記録をホームページに残す作業をすることにしました。前回一気に作業を終わることのできた新宿のCafficeに今回も行くことにしました。今回はもう一つ期待することがありました。それは、Cafficeでは有線LANケーブルを貸してもらえるとウェブサイトにあったので、高速インターネットが利用できるのではないかという期待です。

苦労したのは、 Cafficeの場所がわからなくなってしまったことでした。新宿高島屋デパートの裏だと記憶していたのですが、一つ向こうの通りだったために、見つけるのに苦労しました。このカフェはどうやら、人との待ち合わせにはあまり適していないかもしれませんね。その分、お客が少なくて中では快適に過ごせるわけですが、、、

広々としたカフェですが、有線LANが使える座席は20と限定されています。広いテーブルにLAN端子を見つけたので、ここを作業机にすることにしました。幸い、客が少なかったことと、隣席とのスペースが大きくとられていたので、前回と同様に快適に作業を進めることができました。ランチタイムだったので、前回同様にパスタセットを注文しました。前回とは違い中身で、とても美味しかったです。セットのコーヒーも大きなカップで味も上々。

LANケーブルを早速お願いしたところ、アダプターもつけて貸してくれました。私自身、アダプターを持参していたのですが、これは使う必要はありませんでした。カフェの店員が親切に使い方を教えてくれたのもありがたかった。

テーブルの前方には電源とLAN端子が設置されていて、自由に使うことができます。ここで何時間仕事をしていても、電池切れで困ることはありません。結局、ここに3時間ほどいて、ほぼHPの記事を完成させることができました。前回はWi-Fiだったので、インターネットのスピードが遅く感じられましたが、今回は有線LANのため、測定したところ、下り回線で800Mbpsという超高速を記録。これはWi-Fiの10倍以上のスピードです。次回からは自分で短めのLANケーブルを持参しようかな。

 

参考文献

講談社編『井上円了 「哲学する心」の軌跡とこれから』(2019年 講談社)
竹村牧男著『井上円了 : その哲学・思想』(2017年 春秋社)
三浦節夫著『井上円了 : 日本近代の先駆者の生涯と思想』(2016年 教育評論社)
井上円了著『妖怪玄談』(青空文庫)
井上円了著『妖怪学全集』(全6巻)柏書房
桑子敏雄著『何のための「教養」か 』 (2020年 ちくまプリマー新書)
慶應義塾大学教養研究センター編『「教養」を考える』(2003年 慶應義塾大学出版会)


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