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OneNote活用術 電子書籍

OneNote 翻訳術
ー電子辞書、デジタル・リソースを最大限に活かすー

翻訳作業のプラットフォームをOneNoteで作成

10年前と現在を比較して、翻訳作業でいちばん変わったのは、翻訳の作業の99%がPC上で行えるようになったことでしょう。かつては紙版の原著を取り寄せて手元に置き、紙製の分厚いランダムハウス英和大辞典と、翻訳用のノート、筆記用具、平凡社の25巻もある世界大百科事典を準備して、いざ翻訳といったものだったと思いますが、そんな光景はもはやどこにも見られません。ほとんどの翻訳家は、PCを中心に作業をしていることと思います。

ただし、私の場合は同じくPCを使うといっても、WordやPagesなどのワープロソフトはほとんど使いません。そのかわりに、翻訳作業の「プラットフォーム」あるいは「ワークスペース」として、OneNoteを使おうと思っています。もうひとつは、情報収集と保存の場として、OneNote以外にEvernoteというクラウド型のノートアプリも併用したいと考えています。EvernoteとOneNoteを併用した「デジタル・スクラップブック」作成の実際については、次の記事をご参照ください。

原著"Digiital Difference"の翻訳プラットフォーム

前置きが長くなるのもなんですから、私がこれから進めようと思っている、Russell Neuman著 " Digital Difference"翻訳のOneNote上のプラットフォーム(あるいはワークスペース)をお目にかけたいと思います。

このワークスペースがあまりにも広大なため、フォントが非常に小さくて見にくいかと思いますが、OneNoteの最大の特長は、上下左右に無限大の広大なワークスペースを作れる点にあります。翻訳の作業にとっては、これが実に使いやすい構造なのです。

Wordなどの文書作成ソフトでは、上下左右のサイズが、印刷されたページに合わせて設定されています。したがって、通常はA4になっています。これだと、原文を表示するのが精一杯で、左右の余白に翻訳文を入れたり、注釈をつけたり、参考資料を貼り付けることはできません。でも、OneNoteなら、上の画像にみるように、いともたやすくできるのです。しかも、ワープロソフトとは違って、本文の行に合わせて、翻訳文をつけたり、参考文献を貼り付けるといった難技も軽々とこなしてしまいます。それもこれも、OneNoteが「自由な入力枠」を任意に設定できることに起因しています。

このプラットフォームは、4つの領域に分かれています。いちばん左には、目次や各章ごとのコンテンツにジャンプするための「タブ」が並んでいます。その右側の広大なスペースは、いま開いているセクション(Prologue)のコンテンツです。真ん中の欄は原書の本文、右側には翻訳文(まだ入力を始めたばかりなので空白が大きい)、左側には、本文と関連の深い文献、資料、英和辞典の語義などを貼り付けています。

参考文献や翻訳文は、上下の任意の位置に貼り付けることができますから、原著の本文とずれることはありません。これは従来のワープロソフトではできなかった大きなメリットといえるでしょう。

ただし、OneNoteを使った翻訳作業は、左右上下に広大なワークスペースを必要としますので、PCはできるだけサイズの大きいものを購入して作業することをおすすめします。私の場合は、27インチのiMac (5K Retina Display)を使っています。これなら、左右いっぱいにoneNoteを広げて、3つの領域を同時に見ながら作業を進めることができます。なお、目次や各セクションにジャンプするためのセクションやページのタグ(しおり)は、左の本棚アイコンをクリックすると、畳むことができますので、作業を本文、翻訳文、参考資料の3列表示部分に集中して進めることができます。必要なときだけ、左のインデックス部分を開けばいいのです。

Web上のリソースはEvernoteに保存

翻訳では、不明点を明確化するために、しばしばWikipedia(とくに英語版)を参照します。昔なら著者にメールで問い合わせていたような事柄でも、英語版のWikipediaを検索することで解決する場合が少なくありません。

その場合、調べたWikipediaその他のWebページは、念のためすべてPCに保存しておくようにしています。OneNoteには、Webページをまるごと、あるいは一部分クリップして、OneNoteのページとして保存してくれる(Chrome拡張)機能があります。けれども、保存されたページは、もとのページに比べると品質が劣り、あまり見やすいとはいえません。

その点、Evernoteというノートアプリを使えば、Webページの全体でも、記事部分だけでも、オリジナルのページとほぼ同じ外観で、しかもテキスト検索可能な形で保存してくれるので便利です。また、「タグ」名を適切につけることによって、取り込んだリソースをきちんと整理することができます。

例として、プロローグの冒頭に引用された文章の著者であるEverett Rogersというアメリカの有名なコミュニケーション研究者の履歴や業績を確認するために、Wikipedia英語版で人名検索をしてみました。Rogersはあまりにも有名なので、日本語のWikipediaでも詳しい解説が載ってはいますが、英語版のほうが詳しいし、正確なので、英語版のWikipediaページをEvernoteに保存しておくことにします。Chromeブラウザの拡張機能 Evernote Web Clipperをインストールすると、下の画像のように、記事を指定し、取り込み先のEernoteのノートブック名、タグ名を指定してクリップすることができます。

次に、Evernoteを開いて、Digital Differenceのタグをクリックすると、下のように、Rogersに関するWikipediaの記事本文が図を含めて、きれいに保存されていることがわかります。

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