クリスマス・イブに起こった奇蹟:「大草原の小さな家」フィナーレ
今日はクリスマス・イブです。欧米諸国などキリスト教圏を中心に、多くの家庭ではクリスマス・イブを盛大に祝っていることでしょう。イブには、イエス・キリストの奇蹟が起こるともいわれています。聖書によれば、イエスの誕生そのものが一つの奇蹟として描かれています。
私が若い頃から好きで繰り返し見ているアメリカのテレビドラマ『大草原の小さな家』は、西部開拓時代のアメリカ人が小さなコミュニティを作り、教会を中心にキリスト教の博愛精神で互いに助け合う、心温まるストーリーです。
このドラマは、1974年から1982年まで、アメリカのNBC制作で、全9シーズンにわたって放送され、世界的なヒットを記録しました。現在でも、世界中で再放送され、高い人気を保っています。
ネット動画配信のF.O.Dでは、シーズン1からシーズン9までの全番組と、最後に放送された3つのスペシャル番組を配信しています。現在、1ヶ月の無料サービスを提供中です。
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また、HULUでは、シーズン6から9までの全エピソードに加えて、フィナーレを飾る3つの長編ドラマが「シーズン10」として配信されています。
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この他、U-Nextでも、『大草原の小さな家』の全番組を提供中です。
以下では、最後に放送された3つのドラマのうち、クリスマス・イブに起こった奇蹟をテーマとする「未来ある者たちへ」(Bless All the Dear Children)と、最終話を取り上げ、ストーリーを簡単に紹介しておきたいと思います。
クリスマス・イブの奇蹟
舞台となるウォルナット・グローブに何度目かのクリスマス・シーズンが巡ってきました。人々は聖夜を迎える準備に、愛する人達へのクリスマス・プレゼントを買い出しに行きます。主人公一家のアルマンゾは、ローラや娘のローズらと一緒に、近隣住民を代表しマンケイトに買出しに来ました。けれども、アルマンゾがちょっと目を離した隙に、ローズが行方不明になってしまいます。流産で赤ちゃんを失ったばかりの女性が、ローズをさらってしまったのです。
アルマンゾとローラは、必死で行方不明の娘を探し回り、町の孤児院を訪れますが、見つかりません。そこで出会ったサミュエル(サム)という少年が、こっそりとアルマンゾの馬車に乗り込んだことに、アルマンゾらは気づきませんでした。
女性がローズを汽車に乗せて連れ去ったことを知ったアルマンゾらは、鉄道の駅をたどって、女性とローズの行方を追います。二つ目の町で、馬車から降りて独りで町を歩いていたサミュエルが、偶然ローズを見つけます。けれども、「ローズを見つけたら家に帰る」というアルアマンゾの言葉に、自分も孤児院に戻されることを恐れたサミュエルは、アルマンゾたちに、ローズを見つけたことを知らせることができませんでした。
しかし、ローズが見つからないことに絶望しているローラの姿を見て、サミュエルはローズを見たことを告げます。さっそくローズがいたお店の主人に、女性の住所を聞き出したアルマンゾ、ローラ、エドワーズらは、女性の家へ向かいます。
女性は、夫にローズは孤児院の外で偶然見つけたと嘘をつき、自分たちの子供として育てるという承諾を得ていました。アルマンゾらが女性の家を訪れたとき、夫は銃をつきつけ、ローズを渡さないと言いますが、女性が真実を話すと、ローズを誘拐したことを知り、アルマンゾとローラに謝罪し、ローズを渡します。
けれども、アルマンゾらが馬車に戻ると、サミュエルの姿がありませんでした。サミュエルは孤児院に戻りたくなかったのでした。
アルマンゾとエドワーズは、真っ暗な夜の森の中をサミュエルを探してまわりますが、真っ暗でサミュエルの行方はわかりません。
そのとき、暗い空の一点に明るい星が輝き、一筋の光を森の奥の方に投げかけているのをアルマンゾが見つけます。アルマンゾ、エドワーズ、女性の夫がその方向へ行くと、光に照らされた一角で、サミュエルが眠っていました。それはまさに、神の導き、奇蹟の一筋だったのです。
女性とその夫は、サミュエルを養子として迎えることになり、全員が幸せなクリスマス・イブを迎えることができたのでした。
✝ ローラの祈り
同じような、神の導きによる「奇蹟」の物語は、シーズン1第14話の「ローラの祈り」にも登場します。まだ幼くあどけない少女だった頃のローラが、牧師の話を誤解して、神様に近づきたいと願い、山を必死に登って迷子になるというストーリーでした。全10シーズンを通してもっとも感動的なエピソードの一つです。
ローラにはじめての弟が生まれ、お父さんは弟に夢中になります。ローラは弟に嫉妬するあまり、病気になった弟のためにお祈りをしませんでした。弟は死にますが、ローラはそれが自分のせいだと思いつめ、どうしたら償えるか思い悩み、オルデン牧師に相談に行きます。牧師から「神に近づけば祈りは通じる」と言われたローラは、必死で高い山の頂上をめざしますが、道に迷ってしまいます。
いなくなったローラを案じた父のチャールズとエドワーズは、懸命の捜索を続けますが見つかりません。けれども、偶然にも川を流れ下ってきた十字架の木の枝を見つけ、上流にローラがいると確信したチャールズらは、ついにローラを見つけます。ここでは、偶然流れてきた十字架の枝が「神の導き」=奇蹟の役割を果たしていました。
最終回:ウォルナット・グローブよ永遠に
1970年代には絶大な人気を博した「大草原の小さな家」でしたが、1977年には主人公で監督も務めるマイケル・ランドンが不倫問題を起こし、ドラマに登場する回数も激減するとともに、視聴率が低迷し、1983年3月、シーズン9をもって番組は打ち切られました。その後、視聴者の要望を受けて、3本のスペシャル番組が放送されました。その2作目、事実上の最終回ともいえるのが、「The Last Farewell」(ウォルナット・グローブよ、永遠に)です。この番組では、ウォルナット・グローブの土地所有権を盾に住民の立ち退きを求める悪徳不動産業者への最後の抵抗として、住民が一致団結し、ダイナマイトで町を爆破します。
これはすさまじい幕切れですが、金儲けに走る悪人への最大の懲罰を、キリスト教的な博愛精神にもとに下すという、「大草原の小さな家」にふさわしいエンディングともいえます。あるいは、ドラマの舞台となったロケ地を自分の代限りで葬りたいというマイケル・ランドンの想いのあらわれだったのかもしれません。