はじめに
本論文の目的は、過去50年にわたる研究生活を振り返り、特にメディア効果論に関わる実証的研究に、私自身がどのような問題意識をもって取り組んできたかという視点から回顧的に総括することにある。私自身は特定のメディア効果論だけを専門的に研究してきたわけではなく、複数のメディア効果論の研究に積極的に関わり、日本におけるメディア効果論の発展に一定の貢献をすることができたのではないかと考えている。ただし、当然のことながら、すべての効果論に関わったわけではないので、以下の総括的議論も、メディア効果論の包括的なレビューになっているわけではなく、私自身が特に深い思い入れをもって取り組んできた理論に限定したことをあらかじめお断りしたいと思う。
なお、本稿は、2024年12月7日に東京大学情報学環大学院関谷直也ゼミで予定されている筆者の講義のために準備したものである。