わからない語彙の意味を調べる
デジタル時代の辞書検索は、一にオンライン辞書、二に辞書ソフト、三に電子辞書です。OneNoteにPDFファイルから貼り付けた原書のテキストは、それぞれの単語がマウス操作一つでクリップボードにコピーすることができます。したがって、わからない単語に行き当たったら、これをクリップボードにコピーし、「英辞郎 on the WEB」のページやPCにインストールした英和辞典の検索窓にペーストして、語義や用例を調べることができます。その結果は、OneNoteの該当箇所やEvernoteに「ペースト」して保存しておくことも簡単にできます。これがデジタル時代の英単語の検索法です。
一番安上がりなのは、「英辞郎 onth WEB」のページで調べることです。無料な上に、語彙数や文例が豊富なので、真っ先に調べるべき辞書ソースといえます。例として、Digital DifferenceのPrologueに出てきた peruse という一見易しそうな英単語の意味を調べてみましょう。
すると、次のような検索結果が表示されました。
「詳細に調べる」「よく調べる」「熟読する」という意味の他動詞のようです。文例が非常に豊富なのが英辞郎の大きな特長です。次に、PCやソフトの『ジーニアス英和辞典』で peruseの意味を引いてみると、次のように表示されました。
「・・・を丹念に読み通す」「・・・を精読(熟読)する」「精査する」となっています。英辞郎と違って、文例が一つも出ていないのは残念なところです。文例は、翻訳では意味を確定するためにはぜひともあってほしいものです。
それでは、三番目の情報ソース、ある意味では決定版ともいえるカシオの「電子辞書」XD-SR20000に当たってみましょう。先にみたように、辞書横断的に語義を調べると、「リーダーズ」「新英和大辞典」「ジーニアス英和大辞典」「ランダムハウス英和大辞典」「オックスフォード新英英辞典」「オックスフォード米語辞典」の意味が横断的に検索できました。
「リーダーズ」では、「読む」「熟読(精読)する」「ざっと目を通す」「精査する」「吟味する」という意味が表示されました。「新英和大辞典」では、次のように4つもの意味が表示されています。
- 通読する;熟読する、精読する
- 読む
- (人の顔などを)注意深く見る、熟視する
- (古)精査する、吟味する
「ランダムハウス英和大辞典」も、「新英和大辞典」に負けず、4つの意味を載せています。
- (文語)・・・を(丹念に)読む、熟読(精読、閲読)する
- ・・・を読む、ざっと読む
- ・・・を詳細に調べる
- (顔色などを)読む
「オックスフォード新英英辞典」では、「read thoroughly or carefully」となっています。なお、例文を横断検索してみたところ、英和辞典で例文が表示されたのは「ジーニアス英和大辞典」の次の文例のみでした。
He perused the newspaper looking for news of his hometown.
彼は故郷のニュースを求めて新聞を丹念に読んだ。
これに対し、「オックスフォード新英英辞典」には、8つもの文例が載っていました。正確な翻訳を心がけるには、英和辞典に加えて英英辞典の活用が不可欠といえるかもしれません。
なお、Mac PCで入手できるOxford Dictionary of Englishという350,000語、100,000用例を誇る英英大辞典では、peruseを次のように説明しています。
peruse /pəˈru:z/
verb [with object] formal read (something), typically in a thorough or careful way: he has spent countless hours in libraries perusing art history books and catalogues | I perused several online reviews.
• examine carefully or at length: Laura perused a Caravaggio.
– origin late 15th century (in the sense ‘use up, wear out’): perhaps from per- ‘thoroughly’ + use, but compare with Anglo-Norman French peruser ‘examine’.
USAGE: Note that peruse means ‘read’, typically with an implication of thoroughness and care. It does not mean ‘read through quickly; glance over’, as in documents will be perused rather than analysed thoroughly.
(from Oxford Dictionary of English)
このOxford Dictionaryでは、語源の説明もついており、USAGEの説明もわかりやすく、適確な翻訳には大いに役に立ちそうです。
それでは、原書の中で peruse を含む次の文章をどのように翻訳したらいいでしょうか?
Where once audience members could pick from only a few headlines or channels, they are now free to pose virtually any query imaginable in a search engine and in turn peruse a virtually unlimited global collection of articles, books, and videos.
次の日本語訳例では、直訳に近いですが、「詳しく調べる」という語義を採用してみました。これだと、いちばん原文の意味に近いのではないかと思います。
日本語訳例かつてオーディエンス成員は、ほんのわずかの見出しあるいはチャンネルだけからしか選択できなかったが、彼らはいまや検索エンジンを通して、実質的にどのような考え得る質問も自由に投げかけることができるようになっており、無限といっていいほどの世界中の記事や書籍や映像のコレクションを詳しく調べることができるようになった。
こうしてみると、数多くの英和事典、英英辞典の中で、翻訳に一番役に立ちそうなのは、「英辞郎 on the WEB」「Oxford Dictionary of English (Mac版)」「ランダムハウス英和大辞典」の3つではないかという気がします。これからは、原書において意味の不明な英単語やフレーズに出会ったら、まずはこの3つのソースを検索してみたいと思っています。
なお、「英辞郎 on the WEB」には、有料の「PRO」版があります。月額300円(税抜き)または年額3000円です。PRO版に加入すると、豊富な例文、強力な検索機能で単語帳を使うことができます。とくに、検索機能を使えば、従来の辞書では見つからなかったフレーズなども検索することができ、翻訳をより効率化してくれるものと期待されます。
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https://eowp.alc.co.jp/guide/basic.html
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