OneNote活用術 電子書籍

OneNoteとKindleでつくる自分だけの電子ブック

デジタル化が開いたノートブックの新しい可能性

今の中高年層が学生だった1980年代以前は、アナログ時代で、ノートブックは紙製で、そこに載せる情報は手書き文字プラス紙の資料を貼り付けるという形式でした。一度作ったノートブックの内容は修正できず、新しいノートブックを追加することで情報の更新をはかっていました。ノートブックのどこに知りたい情報があるかは、記憶に頼るしかありませんでした。

あれから40年が経ち、いまやデジタル時代真っ盛り。学生や生徒たちは学校の授業のためにノートを持っていますが、これは明らかに時代遅れになっています。一部の私立学校では、iPadをベースにした「ロイロノート」などのデジタルノートブックを全生徒に持たせ、先生方も工夫した教材を作成して、生徒の持つデジタルノートブックに送るようになっています。

学校教育という枠に縛られない一般のネットユーザーは、紙のノートをすべて廃棄して、PC、タブレット、スマホのウェブサイトやKindle、電子雑誌、PDF文書などに載せられたデジタル情報を「コピペ」して、これら複数のデバイスにクラウドで「共有」された「ノートブック」アプリ上に、自分だけの電子ブックを作成することができるようになっています。デジタル情報のコピペは一瞬で行えるため、電子ブックの制作も、きわめて短時間でできるようになっています。こうした電子ブックは、WordPressなどで公開しない限り、著作権にふれることもないため、ネットでつながるすべてのデジタル情報に自由にアクセスし、これを自分だけのオフラインの電子ブックのリソースとして活用することができます。

このようにオフライン非公開の形で電子ブックを制作することには、どんな意味があるのでしょうか?

それが直接的な利益を生むことはもちろんありません。ほとんどがコピペでできているノートブックであれば、創造的作品としての価値もないでしょう。けれども、私達が紙のノートをつけているのと同じように、さまざまな情報を整理し、記憶を定着させ、体系的なデータベースを構築する上では、途方もなく大きな価値があると私は考えています。いわば、究極の学習ツール。それが、完全デジタルノートブックの存在意義だと思うのです。

デジタルノートブックとしてのEvernoteの評価

「デジタルノートブック」といえば、すぐに思い浮かぶのはEvernoteでしょう。私自身、数年前まではもっぱらEvernoteをデジタルノートブックとして利用していました。けれども、Evernoteに情報を入れれば入れるほど、ブックの中が「ゴミの山」状態のようになり、いわば「放ったらかし」になってしまいました。これは私の使い方が悪かったのかもしれませんが、私にとって「理想的なノートブック」とはかけ離れたものであったことは事実です。いったい、何が悪かったのか?それを反省する意味でも、ここでもう一度、Evernoteを「デジタルノートブック」という視点から評価しておきたいと思います。

ほとんどの情報を「ノート」としてクラウドに取り込める

Evernoteの特徴は、ウェブページ、メモ、写真、音声、地図など、ほとんどすべての情報をフラットな「ノート」としてクラウドに同期させることができることにあります。カメラや連携アプリを使えば、手書きメモやレシート、名刺なども簡単にEvernoteに取り込むことができて便利です。

動画を除いてほとんどあらゆる情報を簡単にデジタル化してEvernoteに簡単に取り込めるのは本当に便利ですが、裏を返せば、なんでもかんでもEvernoteに取り込んだ結果、Evernoteのノートブックが「ごみ溜め」状態になってしまうという危険性があるということです。確かに、Evernoteはこの問題を解決するために、「タグ」による整理や、強力な「検索」機能が備わっています。これらを活用すれば、目的の情報を見つけるのは容易になるかもしれませんが、私自身はこの2つともあまり使うことはありませんでした。

「ノートブック」による情報整理

Evrnoteユーザーがもっともよく活用しているのは、「ノートブック」の作成ではないでしょうか。これは、情報の「ジャンル」あるいは「大テーマ」といえるもので、文書のアナロジーでいえば、「キャビネット」あるいは「フォルダ」に該当する情報単位といえるでしょう。ウェブページをキャプチャするときも、保存先として、ノートブックがよく使われています。ただし、自分の扱っている情報が非常に多岐にわたる場合には、「ノートブック」の数が膨大になり、収拾がつかなくなる恐れがあります。そのために、複数のノートブックを「スタック」にまとめて整理することもできますが、スタックによる整理は面倒で、煩わしく感じられます。かといって、「タグ」による整理は、私にはあまり馴染めなくてほとんど使うことはありませんでした。

Evernoteの問題点

Evernoteによる情報整理術の問題はどこにあるのでしょうか?それは、ひとことでいうと、「ノートブック」と「ノート」、あるいは「タグ」と「ノート」という2次元の階層で情報を整理している点にあるのではないか、という気がします。もうひとつは、「なにもかもクラウドにぶち込む」という発想のため、旧来の書籍による情報整理に慣れてきたユーザーの持つインターフェイス像からかけ離れたものになっていることも指摘できるかと思います。

旧来の書籍による情報整理とは、「書籍(ノートブック)」「タイトル」「章(セクション)」「ページ」という3〜4重の階層構造をもったノートブックのことです。これをデジタル世界で実現したのが、以下で紹介するOneNoteです。このソフト(アプリ)も、Evernoteと同様に、クラウドに情報が同期され、また動画をふくむほとんどあらゆる情報をデジタル化して保存することができます。しかも、クラウド部分を除くと、無料で入手することができます。WordやExcelなどのMicrosoft Officeのユーザーなら、OneNoteを活用しない手はないと思います。本ブログでは、OneNoteとデジタルリソースを組み合わせることによって、いかに効率的に有用なデジタルノートブックを制作することができるかを、豊富な実例を交えて紹介したいと思います。

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