Sherlock Holmes Museum : Photo by givingnot@rocketmail.com

ロンドン聖地巡礼「シャーロック・ホームズ」(準備編)

ボール箱 The Adventure of the Cardboard Box

(物語に関連するロンドン市内の場所)

ホームズの驚くべき読心術

焼けるように暑いある夏の日のこと。ワトソンはベイカー街の自宅(地図の1)で椅子に深く座り、ぼんやりと瞑想にふけっていました。そのとき、突然ホームズが「その通りだよ、ワトソン! それは紛争を解決をはかるもっとも不合理なやり方だ。」と言いました。自分の考えていることを見破ったホームズの読心術に、ただただ驚くワトソンでした。


(私が椅子に寄りかかったとき、突然ホームズの声で私の瞑想は破られた
Illustration by Sydney Paget )

送りつけられた2つの耳

これに続いて、ホームズは、ある異様な事件についての最近の新聞記事を見せました。それによると、クロイドンのクロス街(地図の6)に住むミス・スーザン・クッシングに自宅にボール箱が郵送されてきたが、中には切り取られたばかりの人間の耳が2つ、塩づけにされて入っていたというのです。この事件については、レストレード警部からも捜査協力の依頼が来ていました。

そこで、ホームズはワトソンを誘って、事件現場であるクロス街住むクッシング夫人宅に向かいました。到着すると、ホームズはさっそく黄色のボール箱と2つの耳を入念に調べました。


(耳を入念に調べるホームズ
Illustration by Sydney Paget )

2つの耳は切れないナイフで切断されていました。また、同じ人物の耳ではなく、一人は女性のもの、もう一つは男性のものでした。送られてきた小包はミス・S・クッシング宛てのものでした。また、ミス・クッシングには最近まで同居していたセアラという妹とメアリという妹がいました。メアリはジム・ブラウナーという船乗りと結婚していました。セアラは一時メアリ夫婦と仲良くしていたが、けんか別れをしたということでした。

ホームズはウォリイントンにあるセアラの自宅(地図の8)を訪ねましたが、病気で会えませんでした。警察に行く途中、ホームズは食事をしながら、トテナム・コート通り(地図の9)にある質屋で安く購入したストラディヴァリウスのヴァイオリンの自慢話をし続けました。警察でホームズはレストレード警部に会い、犯人の名前を書いた名刺を渡しました。ホームズが書いた犯人の名前は、ジム・ブラウナーでした。


(犯人のジム・ブラウナー
Illustration by Sydney Paget)

犯行の経緯

ホームズはワトソンに、犯人がジム・ブラウンであることを突き止めた経緯を話しました。

"In the first place, her sister's name was Sarah, and her address had until recently been the same, so that it was quite obvious how the mistake had occurred and for whom the packet was meant. Then we heard of this steward, married to the third sister, and learned that he had at one time been so intimate with Miss Sarah that she had actually gone up to Liverpool to be near the Browners, but a quarrel had afterwards divided them. This quarrel had put a stop to all communications for some months, so that if Browner had occasion to address a packet to Miss Sarah, he would undoubtedly have done so to her old address.
"And now the matter had begun to straighten itself out wonderfully. We had learned of the existence of this steward, an impulsive man, of strong passions—you remember that he threw up what must have been a very superior berth in order to be nearer to his wife—subject, too, to occasional fits of hard drinking. We had reason to believe that his wife had been murdered, and that a man—presumably a seafaring man—had been murdered at the same time. Jealousy, of course, at once suggests itself as the motive for the crime. And why should these proofs of the deed be sent to Miss Sarah Cushing? Probably because during her residence in Liverpool she had some hand in bringing about the events which led to the tragedy. You will observe that this line of boats call at Belfast, Dublin, and Waterford; so that, presuming that Browner had committed the deed and had embarked at once upon his steamer, the May Day, Belfast would be the first place at which he could post his terrible packet.
(from Conan Doyle, " The Adventure of the Cardboard Box" )

単語と意味:

stewardberthembark
(客船、旅客機などの)旧字、ボーイ、客室乗務員
(船員の)仕事
乗船する

日本語訳:

「まずわかったのは、彼女の妹の名前がサラであり、最近まで同じ住所にいたということだった。だから、なぜこの小包が間違って送られてきたかという理由が明らかになった。次にわかったのは、この船員が3番目の妹と結婚し、ミス・サラとも一時親しく付き合っており、サラが実際にリヴァプールまで行って、ブラウナーの近くで暮らしていたこと、そのあと仲違いして別れてしまったことだ。この喧嘩によって何ヶ月も連絡がなかったから、もしブラウナーがミス・サラに小包を送りつけたとしたら、彼女の古い住所宛だったはずだ。

「そして今や事態はきわめて明白になった。われわれは、この衝動的で感情の激しい船員の存在を知った。彼は妻のもとにいたいがために、立派な仕事も投げ打ってしまったのだ。また、酒を飲んだくれもしていた。殺されたのは彼の妻と、おそらくは船に関連した仕事をもつ男だったと思われる。いうまでもなく、犯罪の動機は嫉妬だったと考えられる。ではなぜこうした犯罪の証拠品がミス・サラ・クッシングに送りつけられてきたのか?たぶん、彼女がリヴァプールにいた間、彼女がこの悲劇を引き出すような出来事を招いたからではないかと思われる。船の寄港地がベルファースト、ダブリン、ウォーターフォードだということがわかるだろう。したがって、ブラウナーが犯行に及んでから、直ちに蒸気船『メイデイ』に乗船したと仮定すると、ベルファーストがあの恐るべき小包を投函することにできた最初の港ということになる。」

ホームズの推理は正しいことがわかりました。まもなく、レストレード警部から事件の詳しい報告が届いたからです。ブラウナーは、犯行までの経緯を詳しく自供しました。セアラへの憎しみと、浮気をした妻と愛人への憎しみが犯行の動機だったのです。(詳しくは小説をごらんください)

(『ボール箱』 おわり)

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