ローマ:スペイン階段でくつろぐ人々 (photo from Flickr (CC))

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ハイパーメディア版聖地巡礼『ローマの休日』

「ローマの休日」マルチメディア化の試み

いまから25年前、私が大学の教員をしていた頃、学内に「情報科学センター」という共同研究施設がありました。そこでは、学部の垣根を越えて、さまざまな学部の教員が同じテーマで共同研究プロジェクトを行っていました。私も「マルチメディア研究」プロジェクトに参加して、当時はまだ最新だったAppleのパソコン「マッキントッシュ」を使って、マルチメディア教材の開発実験に取り組みました。その成果は、「マッキントッシュを用いたマルチメディア教育システムの実際」(情報科学論集 (22) 48-51 1992年3月)に掲載されました。残念ながら、この研究センターは、その後廃止され、論集も失われてしまいました。私の手元にも、雑誌や原稿は残されていません。たぶん、大学の図書館には蔵書されているのでしょうが、わざわざ見に行く気力はありません。

この「ハイパーカード」を使った、「ローマの休日」マルチメディア化構想は、そのまま立ち消えになりましたが、最近出会ったWordPressのプラグイン「WP Google Maps」で実現できることが分かり、このたび、その試作をしてみました。主な素材は、映画「ローマの休日」の映像ファイルです。

「ローマの休日」事件の顛末

「ローマの休日」は1953年に制作されました。それから50年後の2003年、映像著作権をめぐって、訴訟が起こされます。世に言う「ローマの休日事件」です。2006年5月、パラマウント・ピクチャーズ社は、「ローマの休日」の格安DVDソフトを販売したファーストトレーディングに対し、同ソフトの製造・販売の差止めを求めて、東京地方裁判所に仮処分を申し立てました。その理由は、映画の著作権保護期間が50年であった2003年12月午後12時と、著作権法改正によって保護期間が70年に延長された2004年1月1日午前0時とは同じであるから、1953年制作の映画作品の著作権保護期間は、新著作権法の適用を受け、2033年までだという強引な主張でした。

裁判の結果、2006年7月11日、東京地裁はパラマウント社の申し立てを退ける判決を行いました。パラマウント社は、東京高等裁判所に決定の取消を求めて即時抗告を行いましたが、10月に同様の論点で争われていた「シェーン」事件で敗訴したことを受けて、『ローマの休日』については抗告を取り下げたため、東京地裁判決が確定判決となりました。

この結果、1953年に制作された映画『ローマの休日』の著作権は2003年末をもって切れることになり、現在では「パブリックドメイン」作品として扱われるようになっています。この決定は、私の『ローマの休日』マルチメディア公開に大きな論拠を与えるものと考えられます。以下で紹介する、WP Google Mapsを用いた『ローマの休日』ハイパーメディア作品は、以上の経緯をもとに公開されるものであることをお断りしておきます。

『ローマの休日』マルチメディア地図の概要

私は映画『ローマの休日』の大ファンです。これまでに、何回繰り返し見たか、数え切れないほどです。映画のすべてのシーンや台詞を覚えているほどです。このページでは、その中から、私がとくに気に入っている9つのシーンを抜き出し、WP GoogleマップのMarkerに落とし込んでみました。その方法は、次のとおりです。

  1. MP4ファイルになっている映画『ローマの休日』の中から、動画編集ソフトを使って、目的のシーンをトリミングする
  2. このシーンを書き出し、H.264形式のファイルに保存する
  3. このファイルをYouTubeにアップロードし、「限定公開」に設定する
  4. WP Google Mapsの「マーカー」編集画面で、上の映像の埋め込みコードをペーストして、InfoWindow上に表示させる

選んだシーンは、「フォロロマーノでの出会いのシーン」「ジョー・ブラッドレイのアパートでのシーン」(マルグッタ通り51番地)」「トレビの泉横の美容室でヘアカットするシーン」「スペイン階段での再会」、「パンテオン前のカフェでのシーン」「真実の口」、「サンタンジェロ城のパーティ乱闘」、「バルベリーニ宮前での悲しい別れのシーン」、「コロンナ宮での記者会見のラストシーン」の9つです。いずれも、この映画のハイライトといってもいい重要な場面です。これらは、いずれもロケ現場が分かっている所なので、マップにマーカーをつけることができます。これからローマを訪問する人にも有益な情報となるはずです。

とりあえずこの9地点にマーカーを設定し、その中に映画のシーンを収めたファイルとミニ解説からなるInfoWindowをつけた地図をご披露したいと思います。

  1. フォロロマーノでの出会いのシーン ( Via dell'Arco di Settimio )
  2. ジョーのアパートでのシーン ( Via Margutta, 51 )
  3. トレビの泉横の美容室でヘアカットするシーン ( Fontana di Trevi )
  4. スペイン階段での再会シーン ( Piazza di Spagna )
  5. パンテオン前のカフェにて( Pantheon )
  6. 真実の口 ( Bocca Della Verita )
  7. サンタンジェロでの乱闘 ( Castel Sant'Angelo )
  8. バルベリーニ宮前の悲しい別れ(Parazzo Barberini)
  9. コロンナ宮での記者会見とラストシーン ( Palazzo Colonna )

 

マルチメディア版聖地巡礼「ローマの休日」

 

WP Google Maps Proで作成)

「永遠の都」ローマの思い出を再現する試み

今回作成した「ローマの休日」マップは、魅力にあふれる都市ローマの思い出の一端を伝えようとするものです。いまから20年近く前と10年ほど前、私はローマ市内の主要な観光スポットを、ガイドブック片手に歩き回りました。ジョーのアパートのあったマルグッタ51番地も訪ねてみました。中庭では、家主とおぼしき人が、観光客にいろいろと説明していたのが印象に残っています。また、スペイン階段では、もちろんジェラートを注文して、なめながら階段を上ってみました。トレビの泉では、アン王女が入ったという美容室を探したのですが、それらしいお店は見つかりませんでした。ネット情報によると、現在では鞄屋さんになっているそうです。パンテオン前のカフェにも入ってみました。「真実の口」にも手を入れてみましたが、なにも起こらずにすみました。フォロロマーノにも行き、古代遺跡を堪能しました。唯一行けなかったのは、コロンナ宮です。いまは美術館になっているそうなので、次回はぜひ訪れてみたいと思っています。このマップに落とし込みたいスポットはまだまだたくさんあります。次に行く機会があれば、その前までに、テーマ別に、いろいろなマルチメディアのマップを作成したいと思っています。

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