岩場の難所:遠くにマッターホルンが見える

スイス・アルプス旅行 世界遺産への旅

2023/06/29 幻のエーデルワイス〜試練のハイキング・ロード

「エーデルワイスの丘」をめざして

事前のハイキング計画

今回のスイス・アルプス旅行では、最大の目的の一つが、野生のエーデルワイスを見ることでした。そのため、事前にネットでエーデルワイスの見られそうな場所を探しました。その結果、ツェルマットからケーブルカーでスネガまで行き、そこからロープウェイを2台乗り継いで、「ウンターロートホルン」まで行き、そこから緩やかな下りのハイキングルートを約1時間歩くと、「エーデルワイスの丘」と言われるエーデルワイスの咲き乱れるお花畑に行けそうだ、ということがわかりました。

Outdooractiveという登山アプリの「ルートプランナー」機能を使って、「エーデルワイスの丘」周遊ハイキングルートも作成しておきました。

思わぬ誤算

ところが、当日午後になって、思わぬ誤算がいくつか重なり、当初のハイキング計画が大幅に狂ってしまいました。

まず、午前中はあれほど天気が良かったのに、午後に入って天気が崩れ、雨と雷の悪天候のために「エーデルワイスの丘」まで行くことができませんでした。第二に、ウンターロートホルンまでのロープウェイが6月中は運行されておらず、途中のブラウハードまでしか運行されていなかったことです。これは致命的な誤算でした。というのは、ブラウハードからエーデルワイスの丘までは、下り坂ではなく、登り坂をかなり長時間歩かなくてはならないからです。

スネガからブラウハードまで

ツェルマットからスネガまでは、地下ケーブルで結ばれています。スネガまでは、問題なく行けました。

ツェルマットからスネガまでの地下ケーブルカー

スネガでロープウェイに乗り換えようと思ったら、6月いっぱいは、ここから先は運休しているとのこと。これはショック!ただし、一つ上のブラウハードまでのロープウェイは運行しているという話でした。

せっかくエーデルワイスを探しにここまで来たのに悔しいので、Blauherdで降りた後、エーデルワイス方面のトレッキングルートを歩いて登ることにしました。実はこれが大失敗のもとでした。

ブラウハードの展望レストラン。ここでやめておけばよかったかも。

エーデルワイスの丘に向かう

ブラウハードを出て、エーデルワイスの丘方面に通じると思われる山道を歩き始めました。初めは曇りで問題ないように思われたのですが、1時間くらい歩いたところで、午前中の予報通り雨が降り出し、さらにはこれも予報通り、雷も時折鳴り出すようになりました。さらに、当初のプランでは、ほぼ下りのルートのはずが、Blauherdからのルートは、きつい登りが中心の坂道で、しかも時々手強い岩場を越えねばならず、苦労しました。下の地図は、ブラウハード(Blauherd)からツェルマット(Zermatt)までに辿ったハイキングルートです。トータルで6時間くらいかかりました。

ブラウハードからツェルマットまでのルート

山道は、当初予定した下り中心の道ではなく、きつい登りの連続で、途中岩場を越えねばならない箇所も多く、本格的な登山になってしまいました。

体力もかなり消耗し、いつまで経ってもエーデルワイスに出会うことができず、結局、「エーデルワイスの丘」まで行くのは断念し、Zermatt方面へと進路を変える決断をしました。この決定は正解でした。分岐点で、もしエーデルワイスの丘方面に進路をとっていれば、無事にZermattに戻ることができなかったかもしれないからです。

その後、道は下りに転じ、なんとかZermattにたどり着くことができましたが、到着したのはなんと午後7時でした。その頃には、足が棒のようになり、指には豆ができて、ほとんどまともに歩けないという情けない状態でした。

救いの神5つ

それでも、無事に下山できたのは、5つのお助けツールがあったおかげです。

第一は、iPhone14Proという最新のスマホです。iPhone14Proには強力な防水機能がついていたので、雨の中、手に持ちながら歩いても故障することなく、最後まで正常に動いてくれました。もし防水機能のないスマホだったら、雨に濡れて故障してしまったかもしれません。

第二は、iPhone14にあらかじめインストールしておいた、Outdooractiveというドイツ生まれの登山ナビアプリです。国内では「ヤマレコ」という同種の登山アプリが一番人気、多くの登山家に愛用されていますが、ヨーロッパでは、Outdooractiveの方が性能的に優れているし、人気も高いのです。ただ、このアプリは日本ではあまり知られていません。どこが優れているかというと、地図の精度が素晴らしく、ヨーロッパアルプスなどでは、どんな細い登山路でもきちんと捕捉し、アプリに表示することができるのです。Googleマップではこれができないので、登山には使えません。私は、今回のスイスアルプス旅行の数ヶ月前から、このアプリをiPhone14に入れて、使い方を覚え、リハーサルも繰り返しました。おかげで、今回の「エーデルワイスの丘」ハイキングでも、終始、このアプリで自分が今どこにいるかを絶えずチェックし、正しい経路を辿ることができました。このアプリの使い方は、日本ではほとんど紹介されていないので、出発前に、私がライターを務めている「TCDブログ」で公開しておきました。詳しくは次のリンクをご覧ください。

Outdooractiveでは、単に登山ルートを表示するだけではなく、歩行記録を保存し、後でマップ上に再現することができます。このHPに載せているマップは、Outdooractiveを使って、自分の歩いたルートを記録したものです。もし、アルプスでハイキングする計画をお持ちの方がいたら、ぜひこのアプリをインストールすることをお勧めします。

第三は、大容量のモバイルバッテリーを携行したことです。Iphone14は、バッテリーの持ち時間が短いのが欠点です。1回の充電で、せいぜい3時間くらいしか持ちません。これだと、「エーデルワイスの丘」ハイキングでは、工程の半分くらいでiPhone14が使えなくなってしまったでしょう。このことを事前に予測していたので、リュックの中に、予備用のポータブル・バッテリーを3個用意していきました。そのうちの2台は中国のAlfox製のバッテリーで、合計25,000mAhもの大容量でした。一般には同じ中国製のAnkerというメーカーが一番人気がありますが、事前に両方を購入して性能を比較したところ、Alfoxの方が優秀だとの結論に達したため、Alfoxの製品を採用することにしたのです。これは正解でした。3台のうち1台はAnker製品でしたが、これは使用中にとんでもなく短時間で消費してしまったのに対し、Alfoxのバッテリーは雨にも強く、最後まで動き続けてくれたからです。おかげで、6時間もの登山にも関わらず、iPhone14のバッテリーは動き続けてくれました。

第四は、トレッキングポールが威力を発揮してくれたことです。今回のハイキングは、当初緩やかな下りが中心の初級者向けのハイキングだろうと思っていたのですが、念の為、出発の直前に新宿の登山洋品店「アルペン」で、舶来の超軽量のトレッキングポール(Gripwell)を購入して持っていきました。これもまた、結果的には大成功でした。というのは、先ほども書いたように、6時間に及ぶ登山で、何箇所も遭遇した険しい岩場や、きつい下り坂で散々苦労し、最後には足が棒のようになってしまったからです。このような困難な状況では、トレッキングポールが実に大きな助けになってくれました。もし、トレッキングポールを持っていなかったら、と思うとゾッとします。トレッキングポールは、登山中の私にとって、第3、第4の足になってくれたのです。

最後になりましたが、第五に大いなる助けになってくれたのは、天国にいる父の導きです。このハイキングでも、父と母の写真をリュックに入れておきました。いわばお守りのつもりで。でも、実際にはお守り以上の羅針盤になってくれたような気がします。

Blauherdから登りの道をひたすらエーデルワイスの丘に向かって歩いていきましたが、2時間くらい経ってもエーデルワイスは見つからず、天気は悪化する一方で、雨が降り出し、時折雷鳴が轟くようになりました。下のOutdooractive地図を見ていただきたいのですが、エーデルワイスの丘方面に行くには、「分岐点」を右折しなければなりません。

分岐点での正しい決断

そうすると、これまでよりも上り坂はさらにきつくなり、かつZermattはさらに遠くなってしまいます。左折すると、エーデルワイスに出会うチャンスはほとんどなくなってしまいます。大いに迷ったのですが、最終的には左折してZermatt方面に下っていくことに決めました。これで、せっかくBlauherdからエーデルワイスの丘に行く大きな目的を断念することにしたのです。この決定は私一人だけの判断で行ったというより、無意識に感じていた父と相談しながら決めたという気がしています。たった一人だけの登山でしたが、いつもそばに父がいてくれるという気がしていました。実際、この後も、裸の下り道を歩いていると、すぐ近くで雷が落ちたりということが何回もありましたが、びっくりはしても、恐怖で押しつぶされることはありませんでした。午前中現地のガイドさんに相談したところ、アルプス山中で雷に遭うのはとても危険で、周りに森がない裸の山道では、直に雷に打たれる危険が大きいと注意されました。でも、一人だけで激しい雷鳴の中を歩いていても、父が守ってくれるから絶対に大丈夫だと信じていたために、恐怖に捉われることなく、無事に切り抜けることができました。

また、Zermattへ戻る途中、何回か分岐点があり、そのうちいくつかで、危うく間違った道を選んでしまいそうになりましたが、その度に、見えない父からの注意を受けて、誤りに気づき、引き返すという経験もしました。もちろん声を聞いたり姿を見たりした訳ではありませんが、やはりフィーリングで誤りを咄嗟に察知できたように思います。例えば、上の地図で、「Sunnegga方面に行きかけた所」をいう場所が表示されていますが、この分岐点にある標識にはたくさんの矢印表示があってわかりにくく、「Sunnegga方面」という矢印表示をうっかり見落としていて、その道を辿りかけてしまったのでした。15分くらい歩いて、おかしいことに気づき、慌てて引き返し、正しい道(狭くてわかりにくい急な下り坂)を選択することができました。これも、見えない父の警告をフィーリングで受けたおかげだといえます。もちろん、Outdooractiveアプリを絶えずチェックしながら歩いたおかげでもありますが。

実はこの分岐点に達したときには、すでに午後5時を過ぎていました。事前に調べておいた情報によると、SunneggaからZermatt行きのケーブルカーの最終運行時刻は午後5時でした。ということは、そのままSunneggaに行っても、最終ケーブルカーには間に合わず、徒歩で下る道を探さねければならないのですが、Outdooractiveマップでは、SunneggaからZermattに直接降りられるような歩行ルートは見つかりませんでした。ですから、もし分岐点からそのままSunneggaに向かっていたら、大変なことになる所でした。

このようにして、Outdooractiveアプリと姿なき父のガイドのおかげで、午後7時頃、無事にZermattの町に下山することができました。

今回のハイキングでは、憧れのエーデルワイスにめぐり逢うという当初の夢は叶いませんでしたが、雷雨に打たれながら6時間もの間、急峻なアルプスの山道をさまよい歩くうちに「父の住む天国」というものがより身近なものと感じられるようになるという、世にも貴重な体験をすることができたと思っています。

 

参考資料:エーデルワイスのすべて

エーデルワイスの花

セイヨウウスユキソウ(西洋薄雪草、学名:Leontopodium alpinum)は、キク科ウスユキソウ属に分類される高山植物。ハナウスユキソウ(花薄雪草)と呼ぶ場合もある。

ヨーロッパ各国において、単にエーデルワイスといえばこの植物種を指す。ただし日本には本種が分布しないため、ウスユキソウ属に分類される高山植物全てがエーデルワイスと称されることがよくある。日本産種で本種にもっとも外観などが似ている近縁種はハヤチネウスユキソウであると一般に言われている。

分布

ヨーロッパアルプスが生育地として有名であり、ヨーロッパのウスユキソウ属 Leontopodium は本種のみとされるが、実際にはイタリア半島東部からヨーロッパ南東部にかけて、かなり形態の異なるウスユキソウ属植物(日本での通称はレオントポディウム・ニワレ)が分布している。この植物は学者により亜種 L. alpinum ssp. nivale とされたり、別種 L. nivale に分類されることもある。後者の場合、本種がL. nivale の亜種 L. nivale ssp. alpinum として扱われる。

レオントポディウム・ニワレを L. alpinum ssp. nivale と扱った場合、西はピレネー山脈から東はトルコの山岳地帯までに生育している。中央アジアの高山帯、シベリア、パミール高原、西ヒマラヤに産するものまで亜種 L. alpinum ssp. pamiricum とみなす場合もある。

生態

高度2000-2900mの高山帯の石灰岩地を好む。地上部には綿毛が密生しており、羊毛を被ったかに見える。開花茎は20-30cmほどまで伸びるが、栽培環境下では最長40cmにまで成長したことがある。花は星のように長くて白い花弁を伸ばしているかに見えるが、花弁ように見えるのは苞葉と呼ばれる変形した葉であり、本当の花はその中心に立った径5-6mmの小さく黄色い筒状の花序、5~6輪がそれである。開花期は7-9月。多年生ではあるが、寿命はそう長くはない。

地上部を緻密に覆う綿毛は高地環境へ適応した結果と見られる。本種に限らず高山植物は他の植物が生育しえない場所で成長するため寒さ、乾燥、および紫外線から植物体を保護する何らかの仕組みが必要だからである。

レオントポディウム・ニワレは草丈が本種よりずっと低く10cmに満たない。また綿毛の量が本種のそれよりずっと多い。

人間との関係

一般にはエーデルワイスの名で知られ、ヨーロッパでもっとも有名な高山植物である。エーデルワイスの名はドイツ語の edel(高貴な、気高い)と weiß(白)に由来する。ドイツ語圏以外でも本種の呈する白い外観は純潔の象徴と捉えられており、ルーマニア語名 floarea reginei(女王の花)もこれに由来している(元々はラテン語である)。

高山帯に見られるため多くの地域において山や山に関する事物に関連づけられており、また花言葉にもなっている純潔の象徴としてもさまざまな事物にその名が引用されている。エーデルワイスの名を持つ事物の一覧については「エーデルワイス」を参照。

学名は属名 Leontopodium が「ライオンの足」を意味しており、ギリシア語の leon(ライオン)と podion(pous、足の小さい人)の合成語である。種小名は「高山に産する」といった意味を持つ。

スイス連邦および非公式ながらオーストリア共和国の国花に選定されている。

自生地では古くから消化器及び呼吸器疾患に対する処方薬として民間療法で使用されてきた。一方で園芸植物としてもロックガーデンなどで盛んに栽培されており、ヨーロッパアルプスの観光地では種子に苗、花や蕾の付いた株をよく売っている。成長が早く、きわめて簡単に種子から育てることができる。

ヨーロッパ・アルプスにおいては、夏季に高山帯に家畜を上げ放牧する習慣があるため、それら家畜の食害を受けたり、スイスの観光地などでは開発により個体数が激減しており自生株自体がそう多くない。また、名や象徴から受けるイメージから華やかな印象があるのだが、実物は開花中であってもとても地味で目立たないため、現地を散策し野生の本種を発見するのは難しい。

(Wikipediaより)

「エーデルワイス」の歌

映画 The Sound of Musicより

ユングフラウを背景にAndre Rieuが演奏

楽曲「エーデルワイス」の由来

「エーデルワイス」(英: “Edelweiss”)は、リチャード・ロジャース作曲、オスカー・ハマースタイン2世作詞の楽曲。この曲は1959年のミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』に最後に付け加えられた曲であるとともに、彼にとってもこのコンビにとっても最後の作品である。オーストリアを象徴する花であるエーデルワイスを愛でる歌詞のこの曲は、劇中ではドイツに併合された祖国を離れるゲオルク・フォン・トラップ大佐によって歌われ、祖国愛を表現するものとなっている。

1959年10月、ボストンにおける『サウンド・オブ・ミュージック』の試演のあと、ハマースタインはこのミュージカルに何かが不足していると感じていたが、本公演までに残された時間はわずかで、大きな変更を加えることは不可能だった。そこでハマースタインとロジャーズは、ゲオルク・フォン・トラップ大佐役のセオドア・ビケルがフォーク歌手であることを活かし、ギターで弾き語ってみせる1曲を付け加えることに決めたのである。このときハマースタインは病に冒されており、ボストンに到着したのも遅かったため、このコンビによる他の曲とは異なり、ロジャースによる作曲が先に行われた。ハマースタインはまずオーストリアを象徴する花であるエーデルワイスについて調べ、6日間かけて歌詞を書き上げた[1]。この歌詞は、祖国オーストリアを離れなければならない悲しみの表現を意図したものであったが、単純に山に咲く花を描写するものとなっており、その描写をもってして、強烈な祖国愛を表現するものであった[4]。こうして『サウンド・オブ・ミュージック』の第2幕の終わり間近、音楽祭のシーンにおいてビケル演じるゲオルクによって歌われることとなった「エーデルワイス」は、すぐさま聴衆に受け入れられた。

1965年の映画版でもこの曲は歌われており、子どもたちに歌って聴かせるシーンが物語のより早い段階に加えられている。この映画版でゲオルク役を演じているのはクリストファー・プラマーであるが、歌唱はビル・リーにより吹き替えられたものである。途中から歌に加わるリーズル・フォン・トラップの役はシャーミアン・カーが務めている。

(Wikipediaより)

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