Apple iPhone 補脳器

もの忘れ対策の切り札 iPhoneの活用:
第3回 IPhoneとandroidの性能を比較

主役登場!

今回から、Siriと益男さんに加えて、新しい登場人物2人がこの連続ドラマに参加します。いよいよ主役の登場です。一人目は、補脳器普及のエヴァンジェリストこと「デジじぃ」です。もう一人は、高齢者、認知症、高次脳機能障害の方をサポートする役の女性、「真穂」さんです。さっそく、お二人に自己紹介していただきましょう。

デジじぃ
はじめまして!デジじぃです。高齢70代のデジもの大好き、自称シニアITエヴァンジェリストです。1995年、インターネット普及元年といわれた頃、朝日新聞がasahi.comサイトを立ち上げた直後に個人ホームページを開き、以来インターネットや携帯電話、スマートフォンの活用、利用研究の最前線にいて日本のIT社会の展開過程を文系研究者の視点で観察してきました。2017年に定年前退職して以来、ボランティアでシニア層の方々にスマートフォンの使い方を教えたり、WordPressのホームページ立ち上げを支援したりしてきました。LINEグループの友人に高次脳機能障害を家族にもつ人がいたり、自分自身、認知症ではないものの物忘れがひどかったりするので、これから高齢化社会を迎えて、認知症や加齢、高度脳機能障害などで、記憶障害がますます深刻な問題になると予想されることから、物忘れ対策の切り札としてスマートフォンをフルに活用する方法をいろいろと考えています。
はじめまして、真穂です!私は30代のグラフィックデザイナーです。ボランティアで、記憶障害に悩む高齢者や認知症、高次機能障害の方をサポートする活動をしています。スマートフォンはandroidですが、デジじぃの話を聞いて、iPhoneに乗り換えようかなと心を動かされています。デジじぃは私にとってお友達であると同時に、「メンター」みないな人なので、遠慮なくいろいろと教えを請いたいと思っています。どうぞよろしく!
真穂

iPhoneとandroidの標準アプリどちらがいい?

デジじぃ
真穂の持っているスマホはandroidだというけど、どんな機種なの?
2年前に買ったんだけど、HUAWEIのP30 liteという機種よ。
真穂

デジじぃ
当時大人気だったモデルだね。使い心地はどう?
値段が安かったし、画面が大きくて見やすくて、気に入ってるわ。
真穂
デジじぃ
上の画面は真穂が入れているアプリだね?だいたい必要なアプリは揃っているようだね。じゃあ、真穂が入れているアプリと僕が使っているiPhoneアプリを比べてみようか。ちなみに、僕の持っているスマホはiPhone12 Pro Maxという機種だ。

デジじぃ
このうち、記憶障害を補完、代替してくれる「補脳器」に最小限必要なアプリは、「メモアプリ」「カレンダーアプリ」「ToDoアプリ」の3種類だ。真穂のスマホにも僕のスマホにもこの3つは一応入っているようだね。真穂のandroidでは、「Google keep」がメモアプリ、「Googleカレンダー」がカレンダーアプリ、「ToDoリスト」がToDoアプリということになる。僕のiPhoneでは、「メモ」がメモアプリ、「カレンダー」がカレンダーアプリ、「リマインダー」がリToDoアプリアプリになるね。
じゃあ、androidスマホも「補脳器」として使えるのかしら。
真穂
デジじぃ
いや、アプリの中身を調べてみないと分からないな。一つ一つについて、androidとiPhoneを比較してみようか。

メモアプリの使い勝手を比較

デジじぃ
まずは、「補脳器」の中枢を担うメモアプリを取り上げて、iPhoneとandroidを比べてみようか。最有力候補として、iPhoneは標準アプリの「メモ」、androidについては標準のメモアプリがないので、Googleのメモアプリ「Google Keep」を比べることにしよう。一つ一つの機能について、真穂がP30 liteで使っているGoogle Keepと僕がiPhonで使っているメモアプリの画面を並べながら、どちらが優れているか比較評価していくことにしようね。
それは分かりやすくていいわね。楽しみ!
真穂
デジじぃ
まずは、メモアプリのトップ画面。左がiPhoneのメモアプリ、右がP30 liteのGoogle Keepだ。

iPhone12  「メモアプリ」トップ画面

P30 lite 「Google Keep」トップ画面

どちらもシンプルな画面ね。iPhoneのメモだと、フォルダのアイコンが並んでいるのがKeepと違うわね。
真穂
デジじぃ
いいところに気づいたね。これは重要な点なので、あとで検討しようね。続いては、新規メモの入力画面の比較。

iPhone メモの新規メモ入力画面

Google Keepの新規メモ入力画面

画面下のメニューをみると、iPhoneのメモのほうがわかりやすそうね。でも、Google Keepもいろんな入力に対応しているわよ。音声入力、手書き入力、写真撮影、画像の追加、図形描画、チェックボックスの挿入、背景色や背景画の選択もできるみたい。iPhoneのメモアプリはどう?
真穂
デジじぃ
iPhoneのメモでも、できることはGoogle Keepとほとんど変わらないね。ただ、「チェックボックス」は、Google Keepの場合、日時や場所を指定すると、アラームでリマインドしてくれる機能がついているけど、iPhoneのメモアプリでは、チェックリストを作ってくれるだけ、という点が違っている。つまり、Google keepは単なるメモアプリだけではなく、リマインダーアプリの機能ももっているんだね。でも、メモアプリにそこまで必要なのか、ちょっと疑問を感じるね。iPhoneのメモアプリは、その代わりに、チェックリストにチェックを入れると、その項目をいちばん下に繰り下げてくれるという機能がある。このほうが便利なんじゃないだろうか。というのは、メモ帳に必要なのは、「手続き記憶」に障害のある人が、するべきタスクを一つ一つクリアしたかどうかをチェックできる機能だからだと思うからだ。もう一つ、Google Keepにない機能は、表の自動作成機能だ。iPhoneのメモアプリは簡単に表がつくれるので、とても便利だよ。
なるほど、同じように見えても、できることは微妙に違っているのね。じゃあ、はじめにデジじぃが言っていた「フォルダ」のことを説明してくれるかしら。
真穂
デジじぃ
第1回の記事にも書いたように、大脳の長期記憶は、階層的な意味のネットワークで構成されているんだけれど、それは知識を効率的に保持したり、想起したりするのに一番都合がいいからなんだね。コンピュータも同じで、個々のデータ(ファイル)が階層的なフォルダに格納されることによって、長期記憶を効率的に保持したり取り出したりすることが容易になっているわけだ。WindowsでもMacでもファイルが階層的なフォルダによって整理されているよね。iPhoneのメモアプリにも、同じようなフォルダが作成できるようになっていて、メモ(ファイル)がどんなに多くなっても、フォルダの下にサブフォルダを作ることによって、ゴミためのようなカオス状態にはならずに情報を整理することができるんだ。これは、脳内の階層的記憶ネットワークの外部補完装置としては理想的な形態だといえると思うんだ。

デジじぃの言っていることを、メモアプリで再現すると、下の画像のようになります。左側の画像は、「メモ」アプリ上にAppleというフォルダを作り、そのサブフォルダ(下位階層)として、Mac、iPhone、iPad、AirPods、AppleWatchというフォルダを作っています。サブフォルダはいずれも、Appleの製品名です。このような分類の仕方は、IT製品についての知識を整理する上では、ごく自然な分類方法ではないかと思います。私たちの頭の中でも、Apple製品についての長期記憶は、このような階層ネットワークで秩序化されているものと思われます。Apple製品についての知識をさらに深化させるためには、例えば、iPhoneフォルダの下に、iPhone12とかiPhone13などの新製品についてのサブフォルダが追加されるという形で階層構造が新たに追加されていくものと考えられます。下の右側の画像は、メモアプリにおいて、iPhoneフォルダにiPhone12、iPhone13などの新しいサブフォルダが追加されたことを示しています。

このフォルダとサブフォルダは、メモアプリの場合、いくつでも追加できるので、脳内の長期記憶ネットワークのように、いくらでも深いレベルの階層を作ることができるので、「補脳器」のツールとしては最適といえるでしょう。

なるほどね。これならメモがいくら増えても、サブフォルダや新しいフォルダを作成して、メモをそこに収納することで、ファイルが迷子になったりせずに済むわね。Google Keepの場合はどうかしら。「ラベル」を作成する機能はあるみたいだけど、「フォルダ」に相当するものはどこにもないようね。ラベルはメモを検索したり整理するには便利みたいだけど、フォルダのようにファイルを階層的に格納する入れ物ではないようね、残念ながら。
真穂
私のP30 liteスマホには、他にも使えそうなメモアプリがいくつか入っているんだけど。例えば、One NoteとかEvernoteとか。iPhoneのメモアプリの代用にならないかしら?
真穂
デジじぃ
そうだね。ボクの持っているiPhone12にも入っているから、一緒に検討してみようか。

Evernote、One Noteは補脳器用アプリに使えるか?

Evernoteアプリ

Evernoteは、iPhone標準アプリの「メモ」と同じように、多機能なメモアプリです。ファイルの基本単位は「メモ」ではなく「ノート」と呼んでいますが、中身はメモとほぼ同じです。テキストに加えて、画像、音声、チェックリストを保存することができます。それに加えて、Webクリッパーという拡張ツールを使ってウェブページをそのままのイメージでノートに保存することができます。これは、iPhoneのメモアプリにはない便利な機能です。

Evernoteには、もう一つ「ノートブック」という情報整理の単位があります。これは、「フォルダ」と同じように、複数のノートを収納する情報のまとまりです。ただし、メモアプリのフォルダとは違って、階層的な構造はもたず、フラットに並列する形でしか整理することができません。また、iPhoneメモアプリのようにフォルダを自由に並べ替えることもできません。

タグは、ノートに関連づけて検索しやすくするためのキーワードです。一つのノートには複数のタグを設定することができいます。タグには階層性をもたせることができますが、フォルダとサブフォルダのようなファイル包含関係とは違い、単なる分類上の仕分けにすぎません。

スタックは、ノートブックを束ねてグループ化する働きをしますが、これもフォルダとサブフォルダのような上位、下位の階層関係をもっているわけではありません。また、スタックを作成しようと思うと、ノートブックが最低1つないと作れないという問題もあります。

Evernoteは、基本的に有料アプリです。無料プランもありますが、機能がきわめて限られれてしまいます。無料プランでは同期できる端末の数も2つまでと限られるのが欠点です。

One Noteアプリ

One Noteは、Microsoftオフィスシリーズのアプリ(ソフト)の一つですが、無料で提供されている点が違っています。メモアプリとして、EvernoteやiPhone用のメモアプリと同様に、多機能を誇っています。

OneNoteにおける情報整理の単位は、「ノートブック」「セクション」「ページ」「サブページ」「サブページ」の5つです。これら5つの単位は階層的な包含関係をもたせることができます。ちょうど書籍の「本」「章」「ページ」のような関係にあります。「ページ」ないし「サブページ」は、iPhoneのメモアプリでいう「メモ」に相当します。「ノートブック」と「セクション」がiPhoneのメモアプリでいう「フォルダ」に相当しますが、ノートブックやセクションにはサブフォルダが作れないため、iPhoneメモアプリのように無限の階層的ネットワークを作ることはできません。

新規ページの入力画面に挿入、保存できる情報は、他のメモアプリとほぼ同様です。Evernoteと同様にWebクリッパー機能もありますが、Evernoteがクリップした画面を自由に編集することができるのにタイし、One Noteでは、画像形式でクリップされるため、編集ができないのが欠点です。

デジじぃ
EvernoteもOne NoteもiPhoneとandroidのアプリは共通の仕様みたいだから、僕がiPhoneでOne Noteを、真帆がP30 liteでEvernoteを操作して、比較してみようか。
了解!じゃあ、私はP30 liteでEvernoteを起動してみるわね。
真穂

iPhone12 One Noteの画面

androidスマホ Evernoteの画面

デジじぃ
じゃあ、iPhoneメモアプリとの比較のために、Appleというフォルダを作って、その下にApple製品のサブフォルダが作れるかどうか調べてみようか。
Evernoteを立ち上げてみたわ。「ノートブック」がフォルダに相当するのね。じゃ、「新規ノートブック」をAppleという名前で作成してみるね。
真穂
デジじぃ
僕も、One NoteでAppleという名前のノートブックを作成してみよう。2つのアプリで、フォルダの名称が同じ「ノートブック」だというのは面白いね。どちらもノートとか書籍のアナロジーで作られているということだね。それがもしかすると短所にもなっているのかもしれない。
あ、間違えた。Appleをノートブックで作成すると、その下にはサブフォルダを作れなくて、メモに当たる「ノート」を作成しなくてはいけなくなるのね。これでは、階層フォルダは作れない。残された方法は、Appleという名前の「スタック」を最上位のフォルダとして作成して、その下にApple製品の「ノートブック」を作るということね。ただし、ストックを作成するには、最低1つのノートブックがないといけないらしいから、取り合えずAppleというノートブックを使って、このフォルダの上にAppleという名前のスタックを作ってみようかしら。ああ、ややこしい!
真穂

Appleという名のスタックの下にAppleという名のノートブックができたわ。これでは変なので、Appleというノートブック名をMacというApple製品名に変更するわね。出来た!上右の画面のように、確かにAppleというスタック(上位フォルダ)の下にMacというノートブックが表示できたわ。でも、iPhoneのメモリアプリに比べると、なんかややこしい感じ
真穂
デジじぃ
それじゃあ、One NoteとEvernoteを使って、Appleという上位フォルダの下に、Mac、iPhone、iPad、Apple Watch、AirPodsという5つのサブフォルダを作ってみよう。

iPhoneのOne Noteで作ったAppleノートブックとApple製品セクション

androidスマホで作ったAppleスタックとApple製品ノートブック

デジじぃ
一応、どちらのアプリでも階層的なフォルダはできたね。でも、iPhoneのメモアプリで作った階層フォルダとは似て非なるものなんだ。
そうね。iPhoneのメモアプリだと、iPhoneフォルダの下に、さらにiPhone12とかiPhone13といったサブフォルダをいくらでも追加できたけど、Evernoteの場合には、iPhoneノートブックの下には、ノートしか作れないのよね。ノートというのは、「メモ」のレベル、つまり記事に相当するから、iPhone12の記事にしても、iPhone13の記事にしても、同じ「iPhone」というレベルのフォルダに一緒くたにして並べておくしかないわけね。これでは情報が整理しづらいわ。
真穂
デジじぃ
そうだね。One Noteの場合も同じだね。最上位の階層をAppleにすると、その下のApple製品はセクションになり、さらにその下は「ページ」になってしまう。これはEvernoteでいうと「ノート」に相当する。というわけで、どちらのアプリもフォルダの階層化には大きな限界があるといわざるを得ないね。
デジじぃ
結局、現状ではandroidにはiPhoneの標準メモアプリのような、無限の階層フォルダを形成できる標準的メモアプリはないということが分かった。将来、androidスマホの標準メモアプリであるGoogle Keepが改良されて、階層フォルダを作れるようになることを期待したいね。それまでは、補脳器の中核アプリとしては、iPhoneのメモアプリを使うのがいちばん賢いやり方だろうね。

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