Coffee & Book on the Table(Pixabay)

OneNote活用術

検索可能なデジタル・スクラップブックをEvernoteとOneNoteで作成する方法 
ーデジタル時代の「知的生産の技術」(完結!)ー

EvernoteとOneNoteにおけるスクラップブックの階層構造

ここで、EvernoteとOneNoteのそれぞれで、デジタル・スクラップブックをどのような階層構造で構築するか、基本的なデザインを設計しておきたいと思います。ただし、Evernoteは容量に制限があるため、デジタル・スクラップブック専用で作成していきます。

スクラップブックの保存先について

それにしても、デジタル・スクラップブックをEvernoteやOneNoteで構築する場合、かなりの容量が必要になります。果たして、パソコンのハードディスクにすべて収納することはできるでしょうか?

ためしに、Evernoteにデジタル化した書籍、雑誌、新聞記事を合計150ページほどを保存したところ、2.6GBもの容量になりました。これでは、パソコンの内部ストレージが限られている場合、あっという間にパンクしてしまいます。もちろん、Evernoteはクラウド・サービスですからスクラップブックのデータはEvernoteのクラウド上に保管されますが、PCを使ってスクラップを作成すると、PC内にもこれを保管するスペースが必要になります。ただし、Evernoteにはアップロードできるノートの容量に上限があり、ベーシックプラン(無料)だと月間60MB、プレミアム(月間600円)だと月間10GB以内となっています。したがって、Evernoteの場合には、この範囲内でスクラップブックを作成する必要があります。

これに対し、OneNoteの場合は、基本的に無料の上、月間の保存容量にいっさい制限はありません。したがって、料金面、容量面で比較すると、圧倒的にOneNoteが有利ということになります。ただ、デジタル・スクラップブックとしての使い勝手はどちらがいいかというのは別の問題ですので、両者のメリット、デメリットを明らかにするためにも、Evernote(プレミアム)とOneNoteを公平に比較していきたいと思います。

Evernoteのデータ階層

Evernoteでスクラップブックを作成する場合、保存対象の「記事」は「ノート」になります。そして、この記事が掲載されている新聞、雑誌、本は「ノートブック」になります。Evernoteには、この2つの保存単位をひとまとめにする「スタック」を作ることができます。このスクラップブックは「電子新聞」「電子雑誌」「電子書籍」「Webページ」の4つのソースから作りますので、これら4つを「スタック」に割り当てることにします。こうすると、

スタック>ノートブック>ノート

という3層構造でEveroteのスクラップブックが作成されることになります。

けれども、3層構造では、特に書籍や雑誌のスクラップブックを作成するには不十分です。というのは、書籍や雑誌の場合、少なくとも「書籍、雑誌、新聞の大分類」「ジャンル」「書籍(雑誌)名」「記事」という4つの階層カテゴリーが必要になるからです。

そこで、この問題を解決するために、Evernoteに特有の「タグ」による整理分類法が適用できるかを検討してみたいと思います。

Evernoteでは、タグを階層化することができます。しかも、何重にも階層化することが可能です。これは「ノートブック」とは大きく違う点です。そこで、雑誌定額読み放題サービスの「Tマガジン」(TSUTAYA)をもとにスクラップブックを作成することにして、Tマガジンの雑誌分類と収録雑誌、記事を素材として、タグの階層をEvernote上で作ってみたいと思います。

電子雑誌に関するタグの3層構造

Evernoteのメニューで「タグ」を選び、+新規タグを押して、まずは「電子雑誌」「電子書籍」「電子新聞」という3つのタグを作ります。次に、「電子雑誌」タグの下に、雑誌ジャンルのタグを作っていきます。ここでは、Tマガジンの分類を踏襲して、「ニュース・総合誌」「エンタメ・趣味」「女性ファッション」「女性ライフスタイル」など計11の「タグ」を作成し、「電子雑誌」タグの下の階層におきます。それぞれのジャンル「タグ」を新規作成して、そのタグを「電子雑誌」タグに重ねるようにドラッグすると、電子雑誌よりも下の階層に置くことができます。

次に、それぞれのジャンルに属する雑誌名を、ジャンルの下の階層に属するタグとして作成します。やり方は、ジャンルの場合と同じで、新規タグとして作成した雑誌をそれが属するジャンル名にドラッグすると、そのジャンルの下の階層に置くことができます。このようにして、下の画像に示すような「雑誌のタグ階層リスト」ができました。このリストは、EvernoteのMac PCアプリで作りました。Windows PCでも作成方法はほぼ同じです。

雑誌記事をEvernoteに「ノート」として取り込む

以上で雑誌スクラップブックの「入れ物」ができましたので、あとは、スクラップしたい雑誌記事を、読み放題雑誌から「切り抜き」、それに日付とタイトルを入れて、雑誌名のタグをつけてEvernoteに取り込むだけです。

ただし、Evernoteでは、すべてのノートは、いずれかの「ノートブック」に属するというルールがありますので、「電子新聞」「電子雑誌」「電子書籍」「Webページ」という4つのノートブックを新規作成しておきます。

雑誌スクラップブック作成の実際例として、『English Journal』誌の2019年8月号の25ページ、「サザエさん」4コママンガの英語版の記事をEvernoteに取り込んでみましょう。Mac PCでは、領域指定のスクリーンショットはcommand +shift + 4 を同時に押すことで行うことができます。Windows PCでは、Windows + Shift + S または PrtScn キーを押すと、スクリーンショットをとることができます。

記事を切り取ってクリップボードにコピーした画像を、Evernoteの新規ページにペーストします。

上の画像は、新規作成したEvernoteのノートに、English Journal誌から切り抜いた記事をペーストし、English Journal というタグと、この記事を表現するタイトルをつけて保存したものです。「ノートブック」名は「電子雑誌」を指定します。これで、Evernoteに電子雑誌のスクラップができました。

電子新聞、電子書籍についても、雑誌の場合と同じように、「ジャンル」と「書籍」のタグをつくり、本文の「切り抜き」をEvernoteの「新規ノート」に貼り付け、タグとタイトルを付加すれば、理想的なスクラップブックができるでしょう。横断的な検索能力を高めたければ、別の分類基準によるタグリストを作り、ノートの「タグ」欄に追加することできます。

電子書籍などの場合には、タグの階層が4つ以上になっても差し支えありません。例えば、英語の教科書をスクラップブックの対象とする場合、タグの階層は

電子書籍語学英語NHK実践ビジネス英語

のように、4つの階層で分類することもできます。実際、Evernoteでは、作れるタグの数はなんど100,000、1つのノートあたりに付加できるタグの数は100までとなっています。これなら、タグの階層を4つ以上にしても問題はありません。ただし、あまり階層を深くしてしまうと、検索しづらくなるというデメリットが発生しますので、1カテゴリーあたりのタグ階層は4〜6にとどめておくのが無難ではないかと思います。

それに加えて、例えば語学教科書なら、「語学テーマ」というタグの下に、「語彙」「読解」「文法」「作文」「会話」といった下位タグを作成しておけば、語学ノートにつけるタグも、より適切なものになるでしょう。

例えば、次のようなタグリストを作成してみます。

実例として、『NHK実践ビジネス英語』のテキストの1ページをEvernoteのノートとして取り込んでみました。

このように、タグを3つつけることができるようになりました。

Evernote Web Clipperで電子新聞記事をタグつきで取り込む

さきほどは、Evernote Web Clipperを使って「日経電子版」や「朝日新聞デジタル」などの電子新聞記事をEvernoteのノートブックに取り込む方法を紹介しました。その後、スクラップブックを「タグ」の階層クラス単位で作成するという方針に転換しましたが、Evernote Web Clipperはこうしたスクラップブック作成にもきちんと対応することができます。

例として、2019年7月7日付け『朝日新聞デジタル』掲載記事をEvernoteに取り込んでみたいと思います。対象記事は、「チェコ女性、カブで日本一周へ」という興味深い記事です。取り込みの方法は、さきほど基本的に同じですが、「ノートブック」は「電子新聞」を選び、タグとしては「朝日新聞」とするだけです。

このあと、「クリップを保存」ボタンをクリックすれば、下の画像に示すように、「電子新聞」のノートブックの中で、「朝日新聞」のタグをつけた記事がきれいに保存されます。

これでもいいのですが、Evernoteには強力なタグ検索機能がありますので、自分にとって関心のあるタグのリストを作成し、記事に追加すると、あとで記事検索しやすくなるでしょう。また、どんな記事をスクラップするかを決めるときにも、自分が作成しておいたタグがつくような記事を選択することで、スクラップブックの範囲を限定することができるかもしれません。下の記事スクラップでいえば、「SNS」「チェコ」は私自身が関心の強い対象なので、このようなタグをつけてスクラップブックにしたという次第です。タグは、あとでいくらでも追加できるので、とても便利です。次に述べるように、OneNoteにはこうした「タグ」機能はありません。

Evernoteのタグは自由に作れる

上の例で示したタグは、いずれも文字だけでしたが、Evernoteは各種記号だけ、あるいは記号と文字を組み合わせたタグを自由に作ることができます。あるタグカテゴリーのグループ(例えば地名、本のジャンル、評価のランキングなど)を作る場合、先頭に共通の記号をつけておくと、タグづけするときや検索するときに便利です。

ここでは、タグの先頭に@をつけて「都道府県名」をグループ化してみましょう。例えば、東京都なら「@東京都」というタグにします。こうすると、Web Clipperで記事を取り込むときも、「タグ」入力欄にと入れるだけで、都道府県のリストが表示され、@東京都という入れたいタグがすぐに見つかり、とても便利です。

また、記事の重要度を5段階の★タグで示したいときも、あらかじめ★から★★★★★までの5つのタグを作成しておけば、Evernoteのノートで、タグ記入欄に★と入れるだけで、5つのランキング記号が表示されるので、選択が簡単になります。同じやり方で、記事の「お気に入り度」を💖マークの数で示すのも面白いかもしれませんね。ただし、記号をあまりにも多用するのは控えめにしたほうがいいかもしれません。というのは、記号を先頭におかなくても、タグの先頭文字を入力すると、Evernoteは自動的にタグ名の候補を表示してくれるからです。

タグ名は、最初から網羅的に作る必要はありません。例えば、企業名のタグを作る場合にも、先頭に「¥」マークをつける、というルールだけを決めておけば、最初に「¥企業」という親タグをとりあえず作っておき、必要になったら、¥ソニーとか¥マイクロソフトなどの子タグを追加していけばいいのです。こうやって、自然にタグが増えていくのも楽しいものですね。

Webページでは必要に応じて階層化されたタグを作って整理する

EvernoteでWebページをスクラップブック化する場合、あらかじめ網羅的なジャンルやタグを作ることは不可能ですし、効率的ではありません。必要になったときに、タグと下位タグからなるひとまとまりのタグ階層をつくり、Web Clipperで取り込み先のノートブックを「Webページ」とし、ページに該当するタグを指定するのが賢いやり方だと思います。

例えば、Google Mapを解説したWebページをEvernoteに保存する必要が出たら、「Googleサービス」に関するタグ階層を作ってから、Web Clipperで取り込むと、きれいなスクラップブックが出来上がります。

Googleマップの解説ページをEvernote Web Clipperで取り込んでみます。保存先は「Webページ」とし、タグは「Googleサービス」と「Googleマップ」を指定します。

これで、「クリップを保存」ボタンを押すと、Evernoteの「Webページ」内にこのWebページが取り込まれます。Evernote内で実際にこのページを閲覧するときは、ノートブック名ではなく、「Googleマップ」というタグの目次で検索するのが効率的です。同じ「Googleマップ」に関する記事が複数あれば、それと一緒に見ることができるからです。Evernote上の「Googleマップ」タグを指定した画面は、下のようになっています。Evernoteでは、Webページが目次を含めて元のページとほぼ同じの非常に見やすい形で表示されます。また、OneNoteとは違ってテキスト検索も適確に行うことができるので、非常に便利です。

 

 

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