第4回　もの忘れ対策の切り札：Siriの使い方

物忘れ対策の切り札アプリ、Siri

すでにこの連載でおなじみの音声アシスタント嬢のSiri。第2回で簡単なやりとりをご紹介しましたが、ここでは、ふだんの生活でよくある「もの忘れ」にSiriがいかに役だってくれるか、やりとりの具体例をできるだけ多く収録しておきたいと思います。

Siriの起動の仕方

Siriの起動の仕方はいろいろとあります。iPhoneの機種や端末の種類によっても少しずつ異なります。共通の起動法は、デバイスに向かって「Hey Siri」と呼びかけてから話すものです。Hey Siriと言わなくても、次のような操作でもSiriを起動することができます。

 X以前のiPhone

ホームボタンを搭載したデバイスでは、ホームボタンを押してから、すぐに用件を伝えます。

X以降のiPhone

サイドボタンを押してから、すぐに用件を伝えます。

用件が長くなる場合は、Siri の呼び出しに使うボタンを長押ししながら用件を伝え、話している間ずっと押し続けます。

AirPods（第1世代）

いずれか片方の AirPod の外側を 2 回叩いて、しばらくしてチャイム音が鳴ったら用件を伝えます。

AirPods Pro

いずれか片方の外側を長押ししてから、用件を伝えます。

Apple Watch

1. 手首を上げて話す
watchOS 5 以降を搭載した Apple Watch Series 3 以降では、「Hey Siri」と言う必要はありません。Apple Watch を口元に近付けるだけで、用件を伝えられます。

2. Digital Crown を押す
Digital Crown をしばらく押し続けてから、Siri に用件を伝えます。

日時、アラーム、タイマー

記憶障害の人は、しばしば時間や日付についての記憶を失ってしまいます。そんなとき、「きょうは何日？」「きょうは何の日？」「いま、何時」というあなたの質問に、Siriはすぐ答えてくれます。

アラームやタイマーのセットも、Siriに頼めばあっという間です。

天気を知る

天気予報は、毎日の欠かせない情報ですね。テレビのお天気情報をチェックしたり、天気情報アプリを開かなくても、Siriに聞くだけで、天気や気温、降水確率などをすぐに教えてくれます。場所を指定すれば、遠く離れた地域の天気情報も知らせてくれます。旅行に行くときなどに便利ですね。

場所、経路、交通案内

失見当識の人は、いま自分がいる場所がわからなくなり、迷子になることもあります。そんなとき、手元にiPhoneがあれば、Siriに呼びかけて、場所や目的地までの交通経路、時刻表などを知ることができるので、そばにサポーターがいなくても、障害を克服することができるでしょう。Siriが到着地までのナビゲーターの役割を果たしてくれます。

益男さんは、いま広い公園にいます。でも、失見当識の状態になり、自分がどこにいるか分かりません。そばにサポーターもいないので、頼りになるのはiPhoneのSiriだけです。iPhoneのサイドボタンを押して、この場所のことをSiriにいろいろと尋ねてみました。

益男さんがいま、広い公園にいます。目の前には山があって、山の上にはお城が見えます。でも、益男さんは自分がいまどこにいるか分かりません。とりあえず写真を何枚かとってみました。とても綺麗な公園です。

Siriとの一問一答：

iPhoneの画面に、詳しい情報が表示されました。マップに現在地が赤いピンで表示されています。「詳細」を見ると、松山市堀之内「城山公園」が現住所だと分かりました。場所がわかったので、最寄りの駅までの道順をSiriに聞くことにしました。

しばらくすると、次の動画のような経路案内のナビマップが表示されました。益男さんは、このナビにしたがって歩いたおかげで、無事に本町1丁目駅へ着くことができました。Siriがかけがえのないサポーターになってくれたのです。

予定、リマインド

手続き記憶に問題のある人や遂行機能障害のある人は、近未来の予定やタスクについての記憶を維持できなかったり、正しい判断が下せない場合が少なくありません。そんなときに役立つアプリが、「カレンダー」や「リマインダ−」です。スーパーに出かけたものの、買物の品目を忘れたり、あすの予定を忘れたりすることは健常者でもよくあることです。Siriにお願いすればこうした問題はすぐに解決するでしょう。

リマインダー

益男さんの「リマインダー」アプリには、マイリストの中に8個の「リスト」が作ってあります。これは、メモアプリでいうフォルダのようなものです。タスクの種類別にリストを分けることによって、複数のタスクを並行的に実行しやすくするためです。例えば、買物をするときは、「買い物」のリストを開けば、買物すべき品の一覧を見ることができるわけです。Siriに「買物リストに〜を追加」といえば、リマインダーの「買い物」リストに追加してくれます。益男さんとSiriとのやりとりはの一例は次のようになるでしょう。

右上の画像にあるように、iPhoneのリマインダーの「買い物」リストには、ブロッコリーが追加されました。

カレンダー

次に、Siriに頼んで、カレンダーに予定を入れてもらいます。聞き方は、「〜（日時）に〜（予定）を登録」または「〜（日時）に〜（予定）を設定」のいずれかを選びます。

すでに入れてある予定を変更してもらうこともできます。

電話をかける

認知症、高齢者、高次脳機能障害者の方がスマートフォンでいちばんよく使うのは、電話機能ではないでしょうか。でも、電話する相手を探して電話をかけるのは一手間かかります。とくに、ふだんあまりかけない相手の場合は、番号を探すのにも一苦労するでしょう。そんなとき、Siriに「電話」と言うだけで、すぐに望む相手に電話をかけることができるので便利です。Siriに「電話」というと、Siriは「どなたに電話をかけますか？」と聞いてきます。それに対して、相手の名前を言うと、SiriはiPhoneの「連絡先」から名前と電話番号を探して電話をかけてくれます。ですから、連絡先に登録しておいた名前で頼む必要があります。第15回では、もっと簡単な電話のかけかたについても説明します。

音楽のリクエスト

記憶障害のある人でも、好きな音楽はたくさんあるでしょう。Siriを使ってiPhoneで好きな音楽をリクエストするには、あらかじめApple Musicに加入するか、iTunesで音楽を購入する必要があります。Apple Musicに加入していれば、好きなジャンルやアーティストの音楽をリクエストしたり、プレイリストやアルバム、曲を指定して、お好みの音楽をすぐに再生して楽しみことができます。また、知らない音楽を聴いたときに、Siriに曲名や歌手の名前など教えてもらうこともできます。

言葉の意味など調べ物に使う

意味記憶の保持と想起に問題がある場合、知っているはずの言葉の意味が分からなくなるといったことがよく起こります。また、知らない言葉に出会ったとき、その意味を知りたいと思うことはしばしばあります。そんなとき、手元にiPhoneがあれば、言葉の意味をたちどころのうちに教えてもらうことができます。いくつかの例をあげておきます。

計算をしてもらう

Siriは計算も得意です。わざわざ計算機アプリを出して数字や記号を入れなくても、Siriに計算式を言うだけで、すぐに答えを出してくれます。

翻訳してもらう

外国人と会話しているときなど、相手の話の意味が分からない、外国語に直して話すにはどうしたらいいか戸惑うことがあります。そんなとき、Siriを起動して、伝えたいことばを日本語で言えば、Siriが相手の国籍に応じて外国語に翻訳して発音してくれます。自動通訳器として使えるかもしれませんね。ただし、現在のとこり、自動翻訳に対応しているのは英語と中国語だけです。フランス語やドイツ語にはまだ対応していないようです。

フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語など多言語での自動翻訳を利用したい場合には、「Google翻訳」アプリを使うのがおすすめです。マイクを使っての音声入力ができますし、出力先の言語を音声で再生してもらうこともできます。