全録レコーダー:東芝REGZAタイムシフトマシン(2018年6月発売)

デジエッセイ メディア研究

【令和改元記念】平成30年を振り返る:デジタル化こそが真の革命的変化だった

30年前のメディア研究を振り返る

いまから30年前、平成改元前夜のこと。昭和の終焉という歴史的な瞬間を前にして、私は一人のメディア研究者として、橋元良明・東大教授、水野博介・埼玉大学教授、竹下俊郎・明大教授ら研究仲間とともにテレビの天皇報道を内容分析する作業を数ヶ月にわたってコツコツと続けていました。当時、テレビ番組を録画する手段といえば、アナログのビデオレコーダーにVHSテープで録音するしか手段がなく、膨大な量のVHSを毎日交換しながら、数ヶ月分のテレビニュースを録画するという気の遠くなるような作業を続けたのでした。録画した番組の重要シーンを紙のプリンターで大量に印刷し、それをNHKに持ってゆき、なんとか学術雑誌への掲載許可をもらったことが懐かしく思い出されます。まさにアナログづくしのメディア研究でした。

あれから30年。ビデオ機器はすっかりデジタル化され、「全録」レコーダーが廉価で入手できるようになっています。その結果、地上デジタルTV8局を連続2週間、最大4ヶ月間も自動保存できるようになりました。もしかすると、今この瞬間にも、日本のどこかで新進気鋭のメディア研究者が全録レコーダーで平成→令和への改元期におけるテレビ報道を録画しているかもしれませんね。今日などは、まさに改元一色の番組編成が全局で展開されているわけですから、「メディア・イベント」の研究対象としては最適かもしれません。それとも、昭和終焉時とは違ってテレビはメディア研究の対象からは外れてしまっているでしょうか?

30年前は、「メディアが創る一億総自粛状況」として、批判の対象になり、私たちの研究も、これをデータで裏付けるという意味で、それなりの意義を有していたように思います。これに対し、今回の改元においては、こうした批判的論調はあまり見受けられないように思われます。「令和」の元号にしても、おおむね好意的に受け止められているようです。

「メディア・イベント」といえば、平成皇太子と雅子さんの世紀の結婚式も私たちの研究対象でした。先行研究であるアメリカのラング夫妻の研究に倣い、記念パレードの沿道で参与観察を行い、沿道住民に配布したアンケートの回答結果やテレビの映像と突き合わせて、テレビのパレード報道と沿道市民の反応の落差に焦点を当てたデータ収集を行いました。残念ながら私自身は当時災害研究に忙しく、この貴重なデータを死蔵してしまいましたが、共同研究者であった水野博介・埼玉大学名誉教授が1993年のマス・コミュニケーション学会で研究結果を報告されています。

埼玉大学学術情報リポジトリ(SUCRA)
埼玉大学学術情報リポジトリ(SUCRA)

CMS,Netcommons,Maple

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あれから30年、私の研究対象も、テレビからインターネットへとシフトしていきました。それは、改元直後の平成元年(1989年)3月に、スイスのCERNという研究機関でティム・バーナーズ・リーがWWW(ワールド・ワイド・ウェブ)の企画書を提案し、やがてインターネットのもっとも重要な発明であるウェブ・ブラウザが誕生したことが直接のきっかけとなっています。

平成時代を活気づけたインターネット

WWWが一般に普及し始めたのは、マイクロソフトからWWWを搭載されたWindowsパソコンが発売された1995年以降のことです。私のネット研究がスタートしたのも1995年8月以降です。同月、「メディアと現代社会」というホームページをベッコアメというISPのサーバー上に立ち上げたのがその始まりです。それ以降、インターネットによる個人の情報発信に関する研究、インターネットとスマホの利用実態、インターネットの社会的影響に関する研究などに全力を注ぎました。平成30年間はこうしてインターネット社会論をめぐる研究に明け暮れたといっても言い過ぎではありません。それが私にとっての「平成」30年でした。

明日から始まる「令和」の時代、メディア研究がどのように展開されていくのか、メディアのさらなる進化とともに、私にとってはとても楽しみです。

4/30はネットニュースも改元一色

いまやニュースもネット中心の時代。ということで、ネットニュースも改元一色のようです。よろしければ、私が1995年に初めて開設した「バーチャルメディアラボ」メディアリンクをごらんください。毎日最新のネットニュースへのリンクを更新し続けています。

http://medialabo.info/
http://medialabo.info/

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