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スティーブ・ジョブズとiPhoneが世界を変えた

スティーブ・ジョブズ没後10年にあたって

Apple創業者のスティーブ・ジョブズが2011年10月5日に亡くなってからちょうど10年になる。亡くなる4年前に発表したiPhoneは、いまやスマートフォンの代表として世界中の人々に使われている。iPhoneは単に携帯電話やメールのツールだけではなく、パソコンや各種プレイヤーの機能をほぼ代替できるようなオールマイティの情報通信端末になっている。iPhoneは私たちの生活を一変させた。生活だけではない。私たちの生き方、健康、老化防止、各種障害の克服にとっても不可欠のパートナーとなってくれることが明らかになりつつある。

2007年に発表したiPhoneは、それまで30年以上にわたってジョブズが培ってきたIT製品化技術の集大成であった。パーソナルコンピュータのAppleとApple IIから始まり、Macintosh、Lisa、NeXT、iMac、iPod、iPad、MacBookに至るまでの一般消費者向けのIT製品群の中で蓄積されたノウハウが、すべてiPhoneの製作につぎ込まれている。その中心的な設計思想(アーキテクチャ)は、Think Different(他とは違った考え方で違うものを作る)と、Make it Simple(複雑なものをシンプルにする)というものだった。シンプルさは「使いやすさ」(easy handling)とも共通している。この設計思想は、iPhoneを例にとれば、本体のデザイン、丸みを帯びた形状、キーボードやスタイラスペンの排除、マルチタッチスクリーン、指による操作、使いやすいアプリなどに具現されている。

ジョブズがiPhoneに投入した設計思想は、2007年1月にMacWorldイベントでiPhoneを発表したときのプレゼンにおいて、はっきりと示されている。そのオリジナルYouTubeをごらんいただきたいと思う。

[HD] Steve Jobs - 2007 iPhone Presentation ( Part 1 of 2 )

[HD] Steve Jobs - 2007 iPhone Presentation ( Part 2 of 2 )

角丸のデザイン

iPhoneの発売に先駆けて、Appleではタブレット(のちのiPad)の開発が始まっていた。その開発の過程で、ジョブズはタブレットの形状とスクリーン上のアプリの形状を「角丸」にするように指示した。それは、デザインの美しさと使いやすさにこだわったからである。こんにち、私たちはスマートフォンやタブレットで角丸デザインを当たり前のように目にしているが、そのルーツはジョブズの深い洞察にあったのである。

キーボードとスタイラスペンの排除

iPhoneが発売される前、携帯電話の後継機種として、ノキアやモトローラやブラックベリーなどの携帯電話メーカは、スマートフォンと称する小さな筐体の下半分を使って、ハードのキーボードをつけた機器を販売していた。しかし、スティーブ・ジョブズはハードのキーボードを邪魔でかっこ悪いと感じ、スクリーン内のソフトキーボードと、指を使ったマルチタッチスクリーンで置き換えるという画期的な発明をした。それによって、スクリーンを広く使って、映画や新聞などを表示させることができるようになったのである。

スタイラスペンを採用せず、指のタッチだけで各種操作できるようにした。これは、操作のシンプルさの実現であり、使いやすさの実現にもつながった。

使いやすいアプリ

iPhoneには、最初から「メモ」「カレンダー」「マップ」「リマインダー」などの標準アプリがインストールされている。これらのアプリは、外見や操作のシンプルさにもかかわらず、高度な機能性をもっている。これらを使いこなすことによって、ユーザーはどんな複雑な用途にも役立てることができる。サードパーティの人気アプリは、しばしば操作が複雑すぎて役に立たないものが少なくない。iPhoneのアプリは、シンプルではあるが、使いやすく、かつ無料なのでコストパフォーマンスがきわめて高い。

ユーザーの視点に立った製品づくり

ジョブズのiPhone発表プレゼンをごらんになっただろうか。発表会の時点では、まだ100%完成しているわけではないのに、ジョブズはiPhoneの機能を隅々まで100%以上に使いこなしているということがわかる。それは、開発の過程で徹底的にユーザー視点から使い方をマスターしてきたことを示すものである。実際、ジョブズの伝記を読んでも、ジョブズがAppleの新製品を生み出す過程で、開発チームのスタッフに何十回となくダメ出しをし、消費者目線で製品の改良を繰り返していたことが分かる。「シンプルさ」「使いやすさ」「他とは違うユニークさ」「美しさ」などジョブズが生み出したApple製品の特長は、こうした膨大な努力の結果生み出されたものなのである。幸い、ジョブズのDNAは、現在もなお、ティム・クッックの率いるAppleにも受け継がれているようで、嬉しいかぎりである。

没後10周年の記念サイト

2021年10月5日は、スティーブ・ジョブズが亡くなってからちょうど10年目の命日である。これを記念して、全世界で追悼のメッセージがウェブ上にアップされている。そのいくつかをリンクで紹介したおきたい。

Apple shares memorial to Steve Jobs on 10th anniversary of his death - The Verge
Apple shares memorial to Steve Jobs on 10th anniversary of his death - The Verge

Apple is commemorating former CEO Steve Jobs’ death with a new short film and statement from the lat ...

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ジョニー・アイブの追悼メッセージ

ジョニー・アイブ氏は、アップルの元デザイン最高責任者で、Appleのスマートで美しいデザインをつくった立役者である。彼のジョブズ氏の思い出が述べられている。

Engadget | Technology News & Reviews
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Tim CookのTwitter

10月5日のApple公式サイトには、ジョブズを偲ぶショートムービーが掲載された。CEOのTim Cookは、Twitterにこのビデオを掲載し、現在でも見ることができる。

2021年10月19日 Apple スペシャルイベント

Appleは現地時間2021年09月07日、同社のイベントページを更新し、米太平洋標準時10月18日の午前10時(日本時間10月19日の午前02時)よりスペシャルイベント「Unleashed. (パワー全開。)」を開催すると発表した。

Appleのイベント - Apple(日本)
Appleのイベント - Apple(日本)

Appleの最新の発表をストリーミングでお届けします。Appleの製品とサービスに関するこれまでのスペシャルイベントも、アーカイブにまとめてあります。

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なぜiPhoneは世界を変えることができるのか?

スティーブ・ジョブズは、若い頃から口癖のように、自分は世界を変えるようなことをしたい、アインシュタインやガンジーやピカソなどの天才と同じように、と言っていたそうである。

Albert Einstein

There are only two ways to live your life. One is as though nothing is a miracle. The other is as though everything is a miracle.

Mahatoma Gandhi

You must be the change you want to see in the world.

Pablo Picaso

Good artists copy, great artists steal.

その夢はパーソナルコンピュータやiPodではかなわなかったが、ようやく50歳になって、iPhoneという魔法のようなニューメディアを発明することによって現実のものとなった。それはなぜか?

その答えは、2007年の彼自身のプレゼンテーションにある。このブログ記事冒頭のアイキャッチ画像をごらんいただきたい。ジーンズのポケットにコンパクトなiPhone12 Pro(私の愛用モデル)がすっぽり収まっている。大きてカラフルなホーム画面が顔をのぞかせている。そこに見えているのは、カレンダー、メモアプリ、天気予報、Gメール、LINE、Chromeブラウザ、Facebook、Twitter、Day One日記、Googleマップ、朝日新聞、Yahoo!ニュース、NHKプラス、YouTube、Prime Video、Apple TV、Kindle、Yahoo!乗換案内、AppStoreなど実に多彩なアプリである。ポケットに隠れたDock部分には、電話、写真、音楽、カメラのアプリが並んでいる。ジョブズが2007年の発表イベントで紹介したのは、そのごく一部にすぎない。あれから14年、多数のサプライヤーから提供されるアプリの数は、天文学的な数に上る。上にあげたホーム画面のアプリだけでも、人間の五感が捕らえることのできるほとんどの情報をiPhoneは処理することができるようになっている。言い換えれば、ジーンズのポケットに、私たちの巨大な脳にも匹敵する「外部脳」を入れて気軽に持ち歩くことができるようになったのである。そこで、私は別の連載ブログで、iPhoneのことを「補脳器」と呼ぶことにした。いや、補脳器では不十分だ。より正確には、「拡脳器」(脳機能を拡張する機器)と呼んでもさしつかえないと思っている。詳しくは、現在の連載の続編で明らかにする予定である。

ポケットに入るIT機器といえば、まず思い浮かべるのは、1980年代の「ウォークマン」、1990年代の「携帯電話」、2001年の「iPod」の3つだろう。これらはいずれも画期的な製品だったが、残念なことに単機能の情報機器にとどまっていた。つまり、人間の脳機能でいえば、「耳(聴覚器官)」の拡張物にとどまっていた。ところが、iPhoneはその拡張器官を一気に「全脳」にまで拡大してしまったのである。これがスティーブもいうように「革命的なデバイス」である理由なのだ。

全脳を拡張することによって、iPhoneは例えば高齢者や認知障害者なら、記憶を保持、再生し、視聴覚を絶えず刺激し、ヘルスアプリで健康を維持するのに大いに役立つ。その結果、老化を防止することにも役立つものと期待される。高齢化が進む今日、「ボケ老人」をなくすためにも、iPhoneは大きな福音となる可能性を秘めている。

これが、高齢者の一人である私自身の考えるiPhoneの最大の効用であり、「iPhoneが世界を変える」ということの意味である。若者だけでなく、一人でも多くの高齢者がiPhoneなどのスマホを使いこなせるようになって、明るい未来を開いてゆく社会を実現させるのが私の夢である。スティーブ・ジョブズが生涯をかけて作り出した、シンプルでスマートなiPhoneがあれば、その夢はきっとかなうと私は信じている。

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