散歩の記録
日時:2025年12月26日(金)
天候:晴れ
場所:鎌倉駅〜瑞泉寺
距離:4.32km
歩数: 4,756歩
カロリー:283kcal
所要時間:2時間05分
ウォーキングマップ 鎌倉宮〜瑞泉寺
フォトエッセイ
鎌倉駅東口〜鎌倉宮(バス)
東京から湘南ラインで鎌倉駅へ。久しぶりの晴天で、期待が弾みます。9時に到着。東口から5番鎌倉宮行きのバスに乗り、約15分で終点の鎌倉宮に到着。
鎌倉宮は、1869年(明治2年)に明治天皇が「悲運の皇子」として知られる護良親王(もりよししんのう)を祀るために建てられた神社です。地元では、親王の尊称から「大塔宮(だいとうのみや)」とも呼ばれます。護良親王とは、後醍醐天皇の皇子で、鎌倉幕府打倒に貢献しましたが、後に足利尊氏と対立し、この地の土牢(つちろう)に幽閉され、28歳の若さで非業の死を遂げました。

瑞泉寺
バスは鎌倉宮まで。この先はゆるやかな登り坂の道を約15分ほど歩きます。でも、いい空気を吸いながら、まだ少し残る紅葉を楽しみながらの散歩は気持ちがいいです。
やがて瑞泉寺手前の小さな門に着きます。瑞泉寺まではもう少し。

瑞泉寺の門をくぐり、拝観料二百円を払って入ると、しゃれた石と小石を敷き詰めた道が山の方へ続いています。これをたどると、坂の石段が見えてきます。

この石段を登って行った先に本堂があるのでしょう。
瑞泉寺の石段について
瑞泉寺の石段が多くの参拝者を惹きつける理由は、以下の3点に集約されます。
鎌倉石が織りなす「わび・さび」の景観
この石段は、長い年月をかけて多くの人に踏みしめられ、角が取れて丸みを帯びています。
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摩耗した石の表情: 中央がすり減った石段は、この寺の歴史の深さを物語っています。
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苔(コケ)の美しさ: 石の隙間や表面には苔がむしており、雨上がりや湿度の高い日には、鮮やかな緑色が灰色の石と美しいコントラストを生み出します。
「男坂」と「女坂」
拝観受付を過ぎて進むと、参道は途中で二手に分かれます。
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男坂(左側): 古くからある石段です。急勾配で、石も不揃いですが、古刹らしい重厚な雰囲気があります。
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女坂(右側): 後から整備された、比較的緩やかな坂道です。足腰に不安がある方はこちらがおすすめです。 ※多くのガイドブックや写真で紹介される「苔むした古びた石段」は、主に男坂の方を指します。
四季折々の「緑のトンネル」
石段の両脇は深い木々に覆われており、まるで緑のトンネルの中を歩いているような感覚になります。
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新緑の季節: 木漏れ日が石段に落ち、清々しい空気に包まれます。
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紅葉の季節: 「紅葉ヶ谷」という地名の通り、秋の終わり(鎌倉は12月上旬頃)には、頭上の紅葉が石段に降り注ぐような絶景が見られます。

石段を登り始めると、やがて石段が二股に分かれたところに到達します。どちらにいけば本堂に行けるのかわかりませんが、傾斜が緩かな方を選びました。これは、「女坂」と呼ばれる石段でしょうか。


瑞泉寺の美しさは、緩やかな曲線を描いて続く、🍁紅葉を散りばめた石段の路にあり!
瑞泉寺の山門について
鎌倉・瑞泉寺の「石段」を登りきった先に待っているのが、「山門」です。鎌倉の瑞泉寺の山門は、質素で詫びた風情が最大の特徴です。
石段登りの「ゴール」としての佇まい
苔むした長い石段(男坂)を登りきり、息が上がったころに目の前に現れるのがこの山門です。
決して派手で威圧的な門ではなく、木造の簡素な造りで、長い年月を経た木の質感と瓦屋根が、周囲の自然に溶け込むように建っています。まさに「禅寺の結界」といった静寂な空気を漂わせています。
紅葉とのコントラスト(晩秋の絶景)
瑞泉寺は「紅葉ヶ谷」と呼ばれる谷にあるため、紅葉が美しいことで知られますが、特にこの山門周辺は絶景ポイントです。
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瓦屋根の紅葉: 12月中旬〜下旬の紅葉シーズンになると、山門の黒い瓦屋根の上に真っ赤なモミジの落ち葉が降り積もります。この「黒と赤」のコントラストは、多くの写真家や参拝者を魅了しています。
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額縁効果: 山門をくぐる際、あるいはくぐってから振り返ると、門の柱や屋根が「額縁」の役割を果たし、切り取られた絵画のような紅葉や新緑の景色を楽しむことができます。
「総門」との違い
瑞泉寺には入り口にもう一つ門があります。
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総門(そうもん): 受付や駐車場の近くにある最初の入り口。
- 山門(さんもん): 石段を登りきった先にある門。
鑑賞のポイント
山門をくぐると、それまでの鬱蒼とした木陰の石段から一転して、明るく開けた空間(本堂前)に出ます。
この「暗(石段・山門)」から「明(本堂・庭園)」への劇的な変化も、夢窓疎石が計算した空間演出の一つと言われています。門そのものの装飾を見るというよりは、「石段を登りきった達成感とともに、門越しに見える季節の風景を味わう」のが、この山門の粋な楽しみ方です。

遠くに山門が見えてきた

山門が近づいてきた。降り積もる紅葉が美しい。

山門の奥に本堂が見える
本堂
山門をくぐって正面にあるのが本堂です。
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「明」の世界への転換 長い石段と山門までの道のりが「静寂・暗」だとすれば、この本堂エリアは「光・明」の世界です。夢窓疎石(むそうそせき)は、苦労して登ってきた参拝者がここでパッと視界が開け、心安らぐように設計したと言われています。
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ご本尊 釈迦如来(しゃかにょらい)が祀られています。また、本堂内には夢窓疎石の像(国指定重要文化財)や、水戸黄門(徳川光圀)が寄進した千手観音像なども安置されています。
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花の寺のシンボル「黄梅(オウバイ)」 本堂の前には、鎌倉市の天然記念物に指定されている黄梅の古木があります。春先(2月〜3月頃)には鮮やかな黄色の花を咲かせ、梅の名所としても知られています。

名勝庭園(岩庭)
本堂の裏手に回ると、このお寺の真骨頂である庭園が現れます。 京都の苔寺(西芳寺)や天龍寺の庭園も手がけた、天才作庭家・夢窓疎石が鎌倉時代末期に作った庭園です。一般的な日本庭園(石を置いたり木を植えたりする「足し算の庭」)とは全く異なる、「引き算の庭」である点が最大の特徴です。


この庭園のすごいところ
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岩盤を「削って」作られた 庭にある池や島、洞窟は、石を運んできて作ったのではなく、そこにあった自然の岩盤(鎌倉石)を彫刻刀で削るようにして作られています。これは日本庭園の歴史の中でも非常に珍しい手法です。
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天女洞(てんにょどう) 正面の岩壁に大きく口を開けた洞窟が見えます。これは飾りではなく、かつて修行僧がここで坐禅を組んだ「水月観(すいげつかん)の道場」です。
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貯清池(ちょせいち) 天女洞の手前にある池です。池の中央にある島も、石を積んだのではなく、周りの岩を削って島だけを「彫り残す」形で作られています。

鑑賞のヒント: 一見すると「工事中の跡地」や「ただの岩場」のように荒々しく見えるかもしれません。しかし、「何も飾らず、自然の岩肌そのものと向き合う」という禅の厳しさが表現されています。華美な装飾を削ぎ落とした、ミニマリズムの極致として眺めてみてください。
句碑
瑞泉寺は古来、多くの文人たちに愛されてきました。下の写真は、久保田万太郎の句碑です。
いつぬれし松の根方ぞ春しぐれ

石段にハラハラと落ちかかる🍁紅葉のはかなさ




夢窓疎石の庭園について
鎌倉の瑞泉寺の庭園を手がけた夢窓疎石(むそうそせき)は、日本の庭園史において「禅の庭(枯山水などの原型)」を確立した天才的な作庭家(であり高僧)です。
彼が作る庭は、単に「きれいな景色」を楽しむものではなく、「庭そのものが修行の場であり、禅の教えそのものである」という深い思想が込められています。
1. 夢窓疎石の庭園 3つの特徴
彼が作る庭には、共通する「禅のメッセージ」が込められています。
「自然」をそのまま活かす(借景と地形)
彼は、石をたくさん運んで人工的な山を作るのではなく、その場所にある自然(山、岩、水、背景の景色)を最大限に利用します。
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瑞泉寺で言えば、後ろにある**「岩盤」**そのものを削って庭にしました。
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後述する天龍寺では、背景にある**「嵐山」**を庭の一部として取り込みました(借景)。
庭は「見るもの」ではなく「修行する場所」
当時の貴族にとって庭は「舟遊びをして楽しむ場所(浄土式庭園)」でしたが、夢窓疎石はこれを「坐禅を組み、心を整えるための厳しい道場」へと変えました。
瑞泉寺の庭にある洞窟(天女洞)は、まさにその象徴で、あの中で坐禅を組んで修行をするための空間です。
「石」に意味を持たせる(石組)
水を使わずに、石だけで滝や川の流れを表現する「枯山水(かれさんすい)」の原型を作りました。
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特に「龍門瀑(りゅうもんばく)」という石組みを好みました。「鯉が滝を登って龍になる」という中国の故事になぞらえ、厳しい修行を経て悟りを開く禅僧の姿を石で表現しています。
2. 瑞泉寺は「原点」である
夢窓疎石は、京都の有名な寺院(世界遺産)を作る前に、鎌倉の瑞泉寺を作庭しました。
つまり、瑞泉寺の庭園は、後の傑作たちが生まれる「実験場」であり「原点」とも言える重要な場所です。
- 瑞泉寺(鎌倉): 岩盤を削る「引き算」の庭。荒々しく厳しい禅の境地。↓ (この経験が発展して...)
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西芳寺・天龍寺(京都): 岩と植物、水を融合させた完成形へ。
3. あわせて知りたい夢窓疎石の代表作(世界遺産)
もし今後、京都へ行かれる機会があれば、瑞泉寺との「つながり」を感じられる以下の庭園がおすすめです。
| 寺院名(場所) | 特徴と瑞泉寺との関係 |
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西芳寺(苔寺)
(京都) |
「苔」と「石」の二段構え
庭園の上部に、瑞泉寺のような「石組み(枯山水)」があり、ここで禅の厳しい枯山水様式を確立させたと言われます。 |
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天龍寺
(京都・嵐山) |
圧倒的な「借景」と「龍門瀑」
瑞泉寺の「自然と一体化する」手法の完成形。嵐山を庭の背景に取り込み、池の中にダイナミックな石組みを配しています。 |

